第45話『犯人』

《水戸side》

今まで1度たりとも出てこなかった名前に全員困惑をした。

「ちとせ、お前この子のこと知らないか?」

「へ!?私!?」

「お前、顔広いだろ。何か知ってると思って。」

「えっと…あんまし目立たない子かな…」

「こいつに"兄弟"はいるか?」

「兄弟…?」

「もしかして…双子ってこと?」

綴が口を開けた。

「そうだ。そっくりな男女2人…双子じゃないかなと思ってな。」

「うーん…聞いたことないなぁ。1回だけ話したことあるけど、兄弟はいないって言ってたし…」

「なるほどな。」

「え、でも兄弟がいないんじゃこの子が犯人ってことじゃ…」

「だからここで思い出して欲しい。順番を。」

襲われた順番。それが1番重要なことだ。

「こいつの力は【コピー】だろ?なら、自分自身をコピーすることくらい出来るんじゃないか?」

「自分自身を…!?」

「そうだ。自分自身をコピーした。そして"かなめの力"を使って自分の分身の性別を男にしたんだろう。」

「ぼ、僕の!?」

かなめがブルブルと震えた。

当たり前だ。自分の力をコピーされ使われたのだから。

「そう。そうして双子の出来上がりだ。双子なら、兄弟がいないこいつが犯人になることは無いからな。」

『…なるほど。それが水戸ちゃんの答えなんですね?』

「…あぁ。そうだ。犯人は藤夜 花斗瑠(フジヤ カトル)という女、そしてコピーで作った自分の分身の2人でかなめを襲った。かなめの力をコピーした犯人は分身を男性の姿に変えあたかも双子のようにした。その次に世宗先輩と乙羽先輩を襲った。恐らくだが世宗先輩の力が厄介だったからだろう。そしてその次に琴梨と神希を襲った。2人の力だと次誰が狙われるか、どこで犯行が行われているのかバレるからだ。そして残った私たちだ。これが私が導き出した【答え】だ。」


『………』


少女は黙った。

顔色も分からない表情をして。

みんなの顔色も悪くなっていった。

自分が襲われたという現実。

【被害者の5人】がかなめ、世宗先輩、乙羽先輩、琴梨、神希だったことに気づき。

空気は最悪だった。

それでも私は…


「真実と向き合わなくちゃ。」


そうしないといけないから。




『素晴らしい!』

少女はにっこりとした表情で拍手をした。

気味が悪くて物騒で、感情がない。

『解峰水戸ちゃん!あなたの答え、受け取りました!』

私たちはこうすれば良かったのだろうか。

本当にこれでよかったのだろうか。

わからないまま…

『では、答えを出した皆さんを"解放"したいと思います!』

ほんとうにこれで…

「終わりなのか…?」

「…水戸?」

「水戸先輩…?」

春樹と琴梨がこちらを見た。

「本当に…終わりなのか?」

いや…まだ何かつっかかる。


どうして私たちはまだ力が使えるんだ?


どうして力が少しおかしいんだ?


どうして無傷で生きているんだ?


どうして…?


頭の中に疑問が溜まる。

溜まって溜まって溜まって…


重い何かに変わる。



「…私たちをここに連れてきたのは、本当にそいつなのか…?」



『…どういうことですか?』



「いや…犯人がわざわざ自分から探されることなんてしない。」



『………』



「ここは一体なんなんだ。今の私たちはなんだ?」



『………………』



「私たちはっっっっ!!!!」



その時、微かに感じた。

なにかおぞましい空気を。

周りと違う空気感を。

あいつは持っていた。

それは背後から忍び寄り、獲物に食らいつく。




まるで…【狼】のように。



《???side》

何かがひっかかる。

ここに来てから、あらゆることがおかしい。

記憶も、力も、そして身体も。

僕の力は別に身体には何も影響しない。

なのに、最近傷や痛みが癒えるのがはやすぎる。

人間の回復速度をオーバーしている。

僕は知っている。

本当の痛みを。

本当の苦しみを。

でも、何かが違う。

ここに来てから何もかも違うんだ。

なぁ、どうして教えてくれないんだよ。

教えてくれないなら…

こっちが探るしかないじゃないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る