第44話『答え合わせ』

《水戸side》

『水戸さん〜!頼まれたものお届けに参りました〜!!』

私は甲高い少女の声で目を覚ました。

「あぁ…やっとか。」

『頑張って集めたんですからね〜?あと今日は遂に答え合わせの日ですね!準備が出来たらまた呼んでくださいね!ではでは☆』

そう言って彼女は消えた。

私は頼んだものを確認する。


「見つけた。」


私は頼んだものと昨日の夜情報をまとめた紙を持ち、支度をして広場へと向かった。




一答え合わせの時間だ一





私が広場へと出るとやはり彼は先にいた。

「おはよう水戸。ぐっすり眠れた?」

「おはよう春樹。あぁ、だいぶね。」

「答え合わせ…だっけ?よく分からないけれど…何か大事なことがわかったんだね…?」

「あぁ。」

「なにか起きたら僕と綴が守るから大丈夫だよ。安心して落ち着いて話してね。」

春樹がポンポンと私の頭を撫でた。

「ありがとう。2人がいれば怖いもの無しだな。」

「うん!任せといて!」

春樹と話をしていると琴梨と神希が広場に来た。

「おはようございます!水戸先輩、春樹先輩!」

「おはよう神希。琴梨もおはよう。」

「…おはよう…ございます…」

琴梨はまだ眠そうだった。

「おはよう。ゆっくり眠れた?」

「はい、お陰様で。昨日は琴梨をありがとうございました。」

「いえいえ。ゆっくり出来たなら良かったよ。」

春樹と神希がニコニコしながら会話をしていた。

私は琴梨の頬をぺちぺちとしていた。

「起きろ〜琴梨。」

「んあ…痛い。」

「お前寝起き本当に最悪だな。もっと頑張れ。」

「お顔にお水でもかけようか?」

そう話していると後ろから乙羽先輩が声をかけてきた。

「乙羽先輩、世宗先輩もおはようございます。」

「おはよう。ほら、冷たい水だよ。」

「んびゃ!?」

乙羽先輩が琴梨の顔に霧吹きのように水をかけた。どうやら目が覚めたようだった。

「おはよう、水戸ちゃん。昨日はごめんね。」

「いえ。大丈夫です。」

「水戸、僕綴起こしてくるね。」

「わかった。助かる。」

春樹は綴を起こしに部屋へと向かっていった。

「おはよ〜!あれ、みんな早いね!?」

春樹と入れ替わりでちとせとかなめも来た。

「おはようちとせ。かなめもおはよう。」

「おはよう。」


「おはよう」。これはもしかしたら最後の朝の挨拶になるかもしれない。

この後私たちがどうなるかわからない。

どのような結末を迎えるのなんて誰も知らない。

ただ私はそれでも前に進みたい。

進むしかないんだ。


「おはよ、水戸。」

「あれ、意外と早かったな。てっきりもっと時間がかかるかと…」

「昨日大事な話するって言ってたじゃん?だからいつもより早起きしたんだよ。」

「早起きって言っても、私たちからすれば寝坊だけどな。」

「うっさいなぁ…」

綴を連れてきた春樹も戻ってきた。


これで全員が揃った。


「はじめるか。」


ドキドキとうるさい心臓の音を無視して私は声を上げた。


「答え合わせをしよう。」



『お!早速ですね!ワクワクが止まりませんよ〜!』

私の声の後少女はすぐにモニターに現れた。

「ねぇ、昨日から思ってたんだけど答え合わせって何の…?」

世宗先輩が私にそう言った。

そうだ、私以外みんな「答え合わせ」の意味すらわかっていないのだ。


「ここでいう答え合わせ…それは【犯人】だ。」


みんなの顔が一斉に緊張感を持った。

【犯人】。私たちがずっと探していた答え。

それをついに解き明かすことが出来たからだ。

「こいつに話すと同時にみんなにも説明をする。じゃあ…はじめるか。」

私は自分が持っていたメモ帳を手に持ち、みんなに説明を始める。



「まず最初の問題。私たちはなぜここにいるのか、だ。」

目を覚ますと知らない場所に私たちはいた。

学校のような場所。それが今いる場所だ。

「私たちに共通すること、それは同じ学校の生徒。そして他にもある。」

「他?みんな学年もバラバラだけど…何かあるの?」

乙羽先輩がそう言った。

「ええ。それは、全員力のランクが【S級】ということです。」

「S級…」

ちとせが自分の手のひらを見た。

「そう。ちとせ、春樹、琴梨、私。この4人はS級だ。ただしく言えば自信でわかっていたのはちとせと春樹、私と琴梨は人から聞いた。ではここで質問させてください。乙羽先輩、かなめ。2人のランクはいくつですか?」

私は乙羽先輩とかなめに質問を投げた。

「…私はS級だよ。」

乙羽先輩は私の目を見てそう言った。

「かなめは?昨日記憶が戻ったなら覚えてないか?」

「…僕もSだよ。危険だしね。」

かなめは自分の腕をつかみながらそう言った。

「やっぱり。」

そして私は彼の方を向いた。

「そして綴。お前もSのはずだ。」

「…確証は?」

「お前が襲われた日だ。あの晩、私と琴梨が話している時に雷華が来たんだ。」

「雷華が!?」

かなめは初めて聞いたらしく驚いていた。

「雷華が見つけた資料、そこにはお前の資料があった。そこにSと書かれていたんだ。当時の私はなんのことだか分からなかったが、昨日ランク制度があることを知り確証した。」

「…そうだったんだ。僕もS級だったんだ…」

「あぁ。あとは世宗先輩、貴方はわかりますか?」

「…ごめん、わからない。」

世宗先輩は顔を下げた。

「ですよね。では他の質問をしてもいいですか?」

「何?」

「ここ最近、何か"夢"は見ましたか?」

「夢…?夢がどうしたん?」

乙羽先輩が横からそう言った。

「世宗先輩。何か見ましたか?」

「…見たよ。知らない"そっくりな男女2人"に襲われる夢をね。」

「…なるほど。」

私の中でまた1つ確証した。

私と春樹と同じような夢を世宗先輩は見ている。

つまり、世宗先輩も襲われた可能性が高いということだ。

「私たちは、全員がS級。そして犯人は、私たちを襲った。動機は私たちの力…S級の力を欲していたから。」

みんなの背筋が凍った。

ピクリと動いてから何も喋ろうとしない。

ただ恐怖感だけが空気に残った。

『ほほう。なるほど。』

「そして次の問題。私たちは記憶が抜け落ちているはずだ。」

「うん…この前話したやつだね。それがどうしたの?」

春樹がそう言った。

「記憶が抜け落ちた順番を再度まとめよう。

まずは琴梨と神希だ。確か、午前中の記憶しか無いんだよな?」

「はい。庭で紅茶を出していました。だよね琴梨。」

「うん。その後の記憶がない。」

「そしてその日の午前中愚か、全ての記憶が無い。それが世宗先輩と乙羽先輩。ですよね?」

「うん。その時の記憶はないの。」

「この前言った通りだよ。何も覚えてない。」

「つまり、世宗先輩と乙羽先輩は2人の前に襲われていたということになる。」

「…襲われた…って、まさか夢で見た…?」

「はい。一部の人しか見れていないようですが恐らくそうでしょう。そしてその日の記憶があるのは私、春樹、綴とちとせだ。かなめはどうだ?この記事に見覚えはないか?」

そう言い私は資料をかなめに見せた。

「知らないよ。それに…僕もこの日の記憶はない。」

「…なるほど。じゃあかなめ、世宗先輩、乙羽先輩がその前から。神希と琴梨が午前中に。私たち4人は後日に襲われたっていうことだ。」

「でも水戸ちゃん、襲われた順番を知って何がわかるの?」

乙羽先輩が首を傾げながらそう言った。

「確かに、何もわかんないよぉ…」

ちとせも考え込んでいた。

「重要ですよ。では皆さんに質問です。

私たちの力の内容、ランクを知っているのは誰だと思いますか?」

「力の内容!?うーん…親…先生…あとは学校の友達…?」

「そうだ。保護者はその子供の力しか知らないだろう?全員だよ。」

「全員なら学校の人…?え、もしかして先生!?」

ちとせは推理しながら目をぐるぐるとさせていた。

「ここで思い出してくれ。世宗先輩、あなたさっき襲ってきたのは"そっくりな男女2人"って言ってましたよね?」

「え?うん。そうだよ。」

「私と春樹も同じ夢を見たんです。その時、微かにわかったのは犯人の"身長"でした。」

「身長…?」

「はい。春樹より背が低くて身体は細かった。そして喋り方も子供らしかった。」

「うちの学校に高校生くらいの身長の先生ってそんなにいないよね〜?うち先生と仲良いけどそんな人見たことないよ〜?」

ちとせがぷかぷかしながらそう言った。

「あぁ。つまり犯人は

私たちと同じ学校の生徒だ。」

『なるほど!それであれを頼んだんですね!』

モニターから少女の甲高い声が響いた。

「あれ…?あれってなに?水戸。」

綴がそう言った。

「あぁ。私が頼んだもの…それは…」




「私たちの学校の生徒全員のプロフィールだよ」



私は手に持っていた【生徒全員のプロフィール資料】をみんなに提示した。

「ここで思い出して欲しい。さっきの襲われた順番だ。」

「順番?ここで?」

「あぁ。私たちの力が目的なら力を吸い取る・奪う・コピーするなどの力を持っている人のはずだろ?」

「その力を持っている生徒を見つければいいんだね!…でもそれに順番は関係あるの?」

「重要だよ。犯人は男女2人。私は今日の朝早くからこのプロフィールを全部確認したが、コピーの力を持っているのは"1人だけ"だったんだ。」

「そ、それって誰…!?」

「それは…」

私は名簿を開き、とあるページで手を止めた。



《藤夜 花斗瑠(フジヤ カトル)》

年齢 高校3ネン/性別 オンナ


特殊な力 【コピー】


名前も、見た目も知らない。

とある少女のページで。

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