第38話『本物の自分』

何か違和感がある。

別におかしいことではないと思うけれど。

なんでかなぁ…

なにか他にも置いてあった気がするな…

「おい綴、そろそろ戻るぞ。」

「あ、待って今行く。」

まぁいいか。


《琴梨side》

「琴梨ちゃん、なにか見つけた?」

「…いや、特に何も…」

私と春樹先輩でパソコン室を調べて早くも20分、特にこれといって重要なものは見つからなかった。

「春樹先輩の方は何かありましたか?」

「うーん…特にはないかなぁ。強いて言うなら…」

そう言うと春樹先輩は少し奥の方へと向かった。

「ここの教師用のPC、画面がおかしいんだよね。」

私も画面を除く。

そこには黒い画面に青い0と1の文字がズラっと並んでいた。

「これは…?」

「わからないなぁ…理系の綴なら分かるかもしれないけれど…こういうのって相当難しいよね…」

「そうですね…普通は習いませんね。」

「とりあえず聞いてはみようかな…」

「ですね。特に何もありませんでしたし、そろそろ隣の部屋に戻りますか?」

「うん、そうだね」

私が隣の部屋に向かおうとすると、春樹先輩がいきなり腕を掴みぐいっと引っ張った。

「いっ!」

「下がって、ごめん強く掴んで。」

「…何かあったんですか?」

「…廊下から誰か来る」

「水戸先輩達ですかね?」

「いや…違う…」

春樹先輩は私を教室の後ろの方へと誘導した。

「男だな…綴じゃない。」

「…え、でも今ここにいない男性って綴先輩だけじゃ…」

その瞬間パソコン室のドアが勢いよく開いた。

「…誰だ。」

そこには息を荒くして片手に本を持った男性がたっていた。

今まで1度も見た事がない人。

しかし、少しだけ面影があった。

「…もしかして、かなめ先輩?」

綴先輩より身長が高く、血管が浮きでた手。

喉で動く喉仏。初めて見たこの"男性"は、目の色と髪の色がかなめ先輩にそっくりだった。

「この人が…かなめくん…?」

春樹先輩は先程より緊張感がなくなりつつ困惑していた。

確かにこの見た目でかなめ先輩と確定するのは難しい。けどかなめ先輩の持つ「力」は【変身】。

元から姿を変えていた可能性が元々あったのだ。

「…ろし…」

「……え?」




「この…人殺し…!!!!」



《水戸side》

「この証拠…かなめに見せたらどう思うのだろうか…」

私と綴とちとせはパソコン室へと戻っていた。

「…でも、真実を伝えないと。かなめっちも変わらないままだよ。」

「…………」

ちとせは普段より真剣な眼差しにすっかり変わっていた。綴は黙りとしたままだ。

「そう…だよな。かなめ…どこに行ったんだ…」

「…なせっっ!!!!」

廊下の角を曲がると微かに声が聞こえてきた。

だが、聞き覚えのない声だった。

「…この声…!!」

ちとせが廊下を走り出した。

「え、ちとせ!?!?」

「なになになに…?」

「おい綴、私達も行くぞ…!」

私は綴の腕をつかみながらちとせが向かったパソコン室へと走っていった。


私たちがパソコン室へと着くと見知らぬ男性が春樹に押さえつけられていた。

「離せ…!!」

「ちょ…暴れるなよ…!!」

「み…水戸先輩…!!!!」

地面でじたばたとしている見知らぬ男性、それを押え付ける春樹、私の方を涙目で見つめる琴梨。

「な…なんだよこれ…」

「この人…かなめくんがいきなり暴れだして…!!」

「痛い!!離せよ!!!!」

「え…この人がかなめ…!?」

私が知っていたかなめと見た目も声も違う。

これは本当にかなめなのか…?

「うん、かなめっちだよ。私が保証する。」

ちとせはかなめの近くで腰を下ろした。

「かなめっち、どうしたの?その見た目でいいの?」

「…思い出したんだよ。何もかも…。」

「………なんで暴れてるの?」

「…あいつが…あいつが……!!!!」

かなめはまた暴れだした。

「ちょっと…!!暴れるなって…!」

「いたたたたた!!離せよ!!この馬鹿力!!」

春樹の腕にもっと力が入ったのがわかった。

「春樹に勝てるわけないじゃん〜。こいつ筋トレしか脳がないんだから。」

綴がおちょくるようにかなめのほっぺをつんつんとした。

「この…!!」

「おい綴、やめろ。えっと…かなめでいいんだよな?あいつって誰のことだ?」

私がそういった時、隣の部屋の扉が開いた。

「なになに?なんの騒ぎ…?」

そう言って出てきたのは世宗先輩と乙羽先輩だった。

「あ…世宗先輩、乙羽せんぱ…」

「っっっっっ!!!!お前…!!!」


その途端、かなめの腕が伸びていった。

にょろにろと蛇のように動く腕は春樹が止めることもできず真っ直ぐに世宗先輩と乙羽先輩の方へと向かっていった。そして手が金属の刃物へと変わった。

「…!!世宗、避けて…!!!」

「っっ!!!!」

乙羽先輩が世宗先輩を後ろに突き飛ばした。

「乙羽…!!!!」


次の瞬間、私たちに酷い頭痛が走った。


私も何があったのか、瞬時にわからなかった。


酷い頭痛。朦朧とする意識。ぼやける視界。


周りの機械や電気からプツリと明かりが消えた。


私は似た感覚を…感じ取ったことがあった。


ついこの間


これは確か




世宗先輩の力だ。



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【第3③syo_ 】

「__?ノセカイ」


君は考えたことはないかい?

今この時代…特殊な力を持って生まれる人間は少なくない。

…いや、持ってない人間は"存在しない"んだ。

みんながみんな、強力な力を持ってこの世界を生きている。

でも強力すぎるとその力は恐れられ、世界が恐怖に脅えてしまう。


でも今、そんなことは"起こっていない"んだ。


どうしてだと思う?


拘束?監禁?そんな可愛いものじゃ収まらないよ


じゃあどうするのかって?

そんなのは簡単さ。



"力を吸い取ればいい"んだ。



ね?簡単でしょう?


そんなに怖がらないで?大丈夫。

僕達は"正義"のためにやっているんだ。

これは必要な事なんだよ。


信じられないって顔をしているね…?

じゃあそんな君に質問。


君は"火を出せる力"や"地を揺らす力"。

誰かを"コントロールする力"や"毒を出す力"。


君の友達には、そんな力を持つ子が"存在"する?


はは!!その顔、素敵だね。

でも暴れちゃダメだよ?


君が暴れたらこの子がほら、もっとボロボロになっちゃうよ?


いいの??


いいの???


その力、"僕達"に頂戴?


大事に"保管"してあげるから♪



ランクSの「解峰水戸ちゃん」?

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