第37?話『幼い頃からの』
僕の家系は先祖代々睡蓮家に仕えている。
僕ももちろんその一人だ。
「いいかい神希、お嬢様を大切にするんだぞ。」
「はい、お父様。」
僕が10歳の頃、ついに仕事を始める日が来た。
僕が仕えるのは同い年の女の子だった。
僕はあまり人とお話するのが得意じゃなくて不安だった。
「この部屋だよ神希。さぁ、お嬢様に挨拶しなさい。」
「はい…」
僕は震える手でドアをノックした。
「今日からお嬢様に仕えることになりました。神希と申します。お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
僕は喉の奥から精一杯の声を出した。
しかし、返事はなかった。
「…あれ?」
まだ寝ているのだろうか…お嬢様を起こすのも使いである僕の仕事…だよな。
「失礼します…」
僕は恐る恐るドアを開けた。
中に入ると部屋はまだ暗かった。
カーテンは閉ざされひとつも明かりがついていない。
大きなベッドから小さな寝息だけが聞こえる。
僕は恐る恐るベッドに近づいた。
「お…お嬢様…?」
ベッドの方に目を向けると瞳を閉じて気持ちよさそうに寝ている少女がいた。
綺麗な灰色の髪にミント色に染るメッシュ。
長いまつ毛に白い肌。
僕は彼女から目が離せなくなった。
このお方が僕の主様…
僕はじっと彼女の寝顔を見つめていた。
「…んん」
すると彼女の長いまつ毛がピクピクと動き、目を開いた。
「………?」
「あっ…おはようございます、お嬢様。今日からお嬢様の使いとなりました。神希と申します。」
「……あぁ。うん、よろしく。」
彼女はまるで分かっていたかのように軽くあしらった。
「えっと…僕のことを知っていたのですか…?」
「えぇ…まぁ。夢の中で知ってたし…」
「ゆ…夢の中…?」
僕は困惑した。頭の中がお花畑の少女なのだろうか。僕には理解ができなかった。
夢の中で僕が出てきたからってこんなに軽くあしらうことなんてあるのだろうか。
「…いま、頭の中お花畑とか思ったでしょ」
彼女がムクリと身体を上げ僕を睨んでそう言った。
「え!?な、なんでわかったんですか!?」
「素直に認めるのね…」
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