第25話『私にしかできないこと』

《琴梨side》

私と神希は保健室を出ててくてくと廊下を歩いていた。

「あの…琴梨…どこ調べますか…?」

「……」

「琴梨…?ここ、寮ですよね?どうしてここに戻ってきたんですか…?」

「ねぇ、神希。何かおかしいと思わない?」

「おかしい…ってどういうことですか?」

「私達全員、ここに来たのはつい昨日が初めてよね。」

「…?はい。そうですけれど…それがなにか…?」

「…水戸先輩、私が『美術室』って言っただけなのに一直線で向かっていったわよね。」

「そうですね……あれ…?どうして水戸先輩美術室の場所知ってるのですか?」

「そうそれ。1度目にしていたのかもしれないけれど、水戸先輩達が目を覚ました場所や昨日調べた場所とは真逆の方向。美術室を見たことがあるということは絶対にありえない。」

「………」

「それともうひとつ、私たちの力。いつもより変だと思わない?」

「…はい。僕も勝手に力が使われちゃう時ありますし…綴先輩が倒れていたのを知ったのも琴梨たちが行ったあとに誤作動したからですし…」

「私も夢の内容がギクシャクしているの。夢の記憶も一部無くなっていたり…つまり、どういうことだと思う?」

「僕達の力が不安定…」

「そう。そして…私達の記憶も不安定。なにか、繋がっていると思うの。」

「でもどうしてここに…?」

「あのアナウンスよ。おかしいと思わなかった?」

「アナウンス…?」

「えぇ。ほら、好きな物ひとつ貰えるってやつよ。」

「好きな物…ひとつ…?」

「……え?」

神希は「なにそれ」と言わんばかりにポカーンとしてこちらを見ていた。

もしかして…知らない?

「え、神希放送聞いてないの?」

「え?はい。何も聞いていませんが…」

「はああああ!?!?」

「ひぇっ!?琴梨!?」

どういうこと?あの放送を聞いていたのは私だけってこと…?それとも…


一部の人、放送が無かったんじゃ…


「ねぇ、神希。朝の放送とか聞いたことある?」

「朝の放送…ですか???」

「……なるほどね。」


放送が流れたのは

・一日目の各教室解放の放送

・今日の朝流れた放送


この2つだ。

1つ目の時、神希は私の部屋にいた。

2つ目は自分の部屋にいた。

つまり、神希の部屋は放送がされないようになっている可能性がある…ということか?


「琴梨…?」

「ん…なに?」

「…琴梨、なんだか昨日より表情が良いですね。」

神希は私の顔を見てにっこりと笑みを浮かべた。

「…別に変わんないと思うけど。」

「そうですか?水戸先輩と話した後からなんだか変わった気がします。何かあったんですか?」

「なんもないよ。さ、私たちは教室を調べるわよ。」

「そうですね。いきましょうか!」

ニヤニヤとした神希は少し駆け足で廊下を走っていく。

「表情が良い…か…」

私は他の人に聞こえないくらいの声で独り言を言った。


水戸先輩、貴方は何かに気づいてるんじゃ…?

この矛盾に…


《かなめside》

僕と雷華とちとせは寮の方へと向かっていた。

「綴くん…大丈夫かな…」

「大丈夫ですよ、きっと。」

僕が下を向いていると雷華が背中をポンポンとしてきた。

「彼は図太そうな人ですから。何がなんでも意識を取り戻すと思いますよ。」

「らいらいポジティブ〜!綴っちは大丈夫だよ!私たちは私たちにできることをしないとね!」

ちとせもふわふわとしながら僕を慰めてくれた。

2人はとっても良い人だな。

この2人がいて本当に良かった。

「あ、ごめん僕ちょっとトイレ行ってもいい?」

「いいよ〜!いってらっしゃ〜い!」

「ここで待っていますね。」

僕はスタスタと広場のトイレに入っていった。



「トイレ綺麗でよかった〜…汚かったら僕もう終わってたよ……」

手を洗いながらボソボソと独り言を言う。

なんだか何もしていないとソワソワしてしまう。

「ふんふん〜♪…あれ?」

鏡を見ながら鼻歌を歌っていると自分の後ろにある清掃用の扉に違和感を覚えた。

「ん〜?なんか…誰かが入ったあとが……って、なにこれ…?」

僕が目にしたのは掃除道具の後ろに隠れた小さな扉だった。

ちょっど人1人くらい入れる大きさでどこかに繋がっているようだ。

「……気になる。めっちゃ気になる…」

僕は自分の力より好奇心を尊重して体を縮めて小さな扉に入った。

「暗いなぁ…しかも普通に通ったら狭すぎ…これどこに繋がってるの…?」

少し進むと道が二手に別れていた。

「あれ…これこのまままっすぐ行ったら女子トイレの方面だよね?さすがにそれはやばいし右に曲がるか…」

真っ直ぐ行く道を女子トイレと仮定し、僕は右の道を進んだ。

少し光が見える。

「これって…1階?降りてみよ。」

小さく小さくなり僕は下に降りた。

「よっと…これで元に戻れたかな。…ここ…どこだろ…」

男子トイレの小さな扉から繋がっていた道は恐らく1階にある教室へと着いた。

周りを見回すと電子機器が置いてあり機械が動く音とファンが動いている音がする。

少し奥にはドアいくつかあった。

「なんか暗いし怖い部屋だな…一旦戻って2人に相談した方が良さそうだね…」

僕は背を伸ばして天井近くのダクトから男子トイレへと戻っていった。



《雷華side》

かなめさんが御手洗に行ってから30分が経過した。

お腹の調子でも良くないのかしら

と考えながら私はちとせさんと一緒に座って待っていた。

「ねぇらいらい。」

しばらく続いていた沈黙がちとせさんによって消された。

「どうしましたか?」

「らいらいってさ、正義感の塊だよね。」

「…正義感の?」

「うん。誰かが困っていたらすぐ助けに行くし誰かのためならなんだってするって感じ。」

「…そんな事ないですよ。私はいつも自分のために行動しているだけです。」

「そう〜?私からは自分を犠牲にしてもいいって感じに思えるけどな。」

「……何が言いたいんですか?」

ちとせさんは私の前に来てしゃがんで顔を合わせてこう言った。


「ねぇ、朝食の後何してたの?」


「…何がですか?」

「とぼけなくてもいいのに。私しってるよ。綴っちを襲ったの、らいらいでしょ?」

「…私が綴さんを襲う理由がありません。」

「そうだね。私も理由はわからない。けどらいらいはきっと私たちのために綴っちを襲った。そうじゃないの?」

「違います。」

「…そっか。」

ちとせさんはゆっくりと立ち上がりふわふわと宙に浮かびながらいつもの笑顔を捨てながら私に言った。


「かなめっちのこと、これ以上悲しませないでよ。」

「…かなめさんを…?」


「ごめん!おまたせ!」

私が立ち上がろうとしていた時、ちょうどかなめさんが御手洗から戻ってきた。

「かなめっち遅いじゃ〜ん!お腹でも壊したの?」

「違う違う!変な通路見つけちゃって探索してた!ごめん!」

ちとせさんは先程の表情は捨ていつもの笑顔でかなめさんと話していた。

「…その変な通路ってなんですか?」

「えっと、清掃用の扉の所に人1人通れるくらいのダクトがあって…多分方面的に女子トイレとも繋がってた。さすがにそっちの道は調べてはないけど…多分1階にある機械がいっぱいある教室に繋がってた!」

「機械がいっぱい……パソコン室とかでしょうか?」

「パソコン室っていうか…なんかそれよりも物騒で…ちょっと怖かった…」

「う〜ん…とりあえず大事そうだし今日は詮索せずに皆に伝えて明日みんなで行こうか!」

「…そうですね。」

「じゃあ一旦保健室戻ろうか!レッツゴ〜!」

私たちは保健室の方に足を向けた。

「あ、ちょ、ちょっと僕鏡見てくる…!」

かなめさんは何かに気づいたのか慌ててトイレに戻って行った。

また私はちとせさんと2人きりになった。

「らいらい、あんまし目立った行動はしない方がいいと思うよ。」

「……」

私は…

私がするべきこと…

私がしなくてはならないこと…

この子にだけ…

「ちとせさん。」

「ん…なぁに?」

「私…私…」

深呼吸をして心臓を落ち着かせる。

私だけが知っていることを。

私だけがどうにか出来ることを。

行動しなければ。

「私は、水戸さんをk_0011010/_01111__/?@1



・・-・・ ・・-・・ ・・ ・-・- -・-・・ ・・・ ・- ・-・・ ・・-- -・--- ・・・ ・--・- ・--- ・-・・ ・-・-・ ・・-・ --・-・ -・・- --・-・ -・ 



-・-・・ ---- -・--- ・-・-- -・・- ---・- ・-・・ -・・- ---・- -・ ・--・- 



001001110101110101100001000101111110010111000101



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error codeを確二ん

ァーkこえますカ?

オー?

マァ、聞こエテナくテもイッか。

あ、復元できた。

えっと、ごめんなさいね、ちょっとマスターのミスでerrorでちゃったみたいです。

そういえば私の名前言ってませんでしたね。

私の名前は【メモリ ネオ】。

本当の名前はめちゃくちゃ長いので今はこれだけ伝えときますね。

んーもう少し場繋いだ方が良いかな…

…ていうかいつものアレが無いですね

ちょーっとまってね…


『んー、』お!

『そうそう!これですコレ!いつものやつ!

いや〜これがないと私が話してるって言うのがよく分かりませんよね〜!

え?私の立場が分からない?

そうですねぇ…中立ですかね…簡単に言えば。

私は皆さんに手は出しませんし、特に何もしません。強いていえばマスターのお手伝いくらいですかね。AIってそういう【モノ】ですよ。

話しすぎましたね。

ほら、はやくしないと貴方の相方さんが心配しちゃいますよ?

起きた方が良いと思いますよ〜?

《si_de

睡蓮さん〜?起きてください〜!』



《琴梨side》

……は?


なに今の


やな夢だな


頭痛いし


あれ


どうしたの神希


なんで泣いてるの?


声が聞こえない


「…り!」


泣かないで


「…とり!」


あなたの泣き顔、見たくない


「ことり!」


もう泣かせないって決めたの


「ことり!起きてください!」


守らなきゃ、この子を守らなきゃ


「琴梨!目覚ましてよ!」


影から守らなきゃ


「僕を…1人にしないで……」

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