第14話『いつも通りの私たち』

「【探偵-たんてい-】

探偵のごとく真実を暴きだせ。


・校内を調査し、真実を暴きだせ。

・最後の答え合わせでその答えを突きつけろ。

・校内を自由に探索する権利を持つ。


条件:正解しなければ全員が巻き添え死をする」




-正解しなければ全員が巻き添え死をする-


確かに私のカードにはそう書かれていた。

このゲームは人の命が賭けられているゲームなのか…?

心臓の音がどくどくとうるさく鳴り響く。

このことを知っているのは私だけ…

他のみんなは命懸けだということを知らないかもしれない…


教えた方が…いいのかな…


私の脳内はぐるぐると回り、視界も回り始めていた。


教えた方が…あの少女が私のことを指さしていた…つまり私が教えられる役職の持ち主だってこと…だよね…でも教えたら…私の命が…!!ど、どうすれば…


目眩と吐き気がする。

私はどうすればいいの。

これから、調べろって…

私に出来るわけが無い。

どうしようもできない。

誰か…



誰か助けて…



その瞬間、意識が遠のいていくのがわかった。

足元もぐらつき、地面に倒れていく。


あぁ…私…倒れちゃうんだ。


時間がゆっくりと進んでいくかのように、倒れていく感覚、意識がさっきよりも遠のいていく…


地面に叩きつけられる感触…



は、しなかった。


微かに、優しい風と花の香りが私を包んだことが分かった。

落ち着く香り、優しい温もり。

「…はる…き……」

私は彼の名前を呼ぶと、意識が完全になくなった。



《春樹side》

先程いきなり現れた少女から渡されたこのカード。

僕の役は誰にも教えてはならないカードだった。


まぁ、考えすぎないようにした方が良いな。


僕はそう思い、幼なじみ2人の方を見た。


今は僕より2人の方が心配だ。

水戸は考えすぎちゃう性格だし、綴はこういう時は鬼のように怖い。

僕達には優しいけど、他の人たちにどういう態度をするのか…想像しただけで冷や汗が出る。


まず僕は隣にいた綴の表情を見た。


りんとした目、何を考えているのかわからない顔。

ほんと、相変わらず表情を作るのが上手だなぁ…

綴はいつもポーカーフェイスで何を考えているのかわからない。

ただ、そのせいで溜め込んでいることも多いだろう。だから僕が定期的に綴に話を聞いている。

今はまだ…もう少しあとに話でもしようかな。

綴は一旦は大丈夫そうだ。


次は水戸……

水戸はカードを見つめたまま顔を青く染め、カードを持った手や肩、足が震えていた。

足元がぐらついていて今にも崩れてしまいそうだった。

水戸は…重傷だ。

話しかけた方が良いよな…そう思った途端、水戸の体が少し後ろに倒れていくのがわかった。


!!危ない!水戸!!!!


僕は慌てて水戸に駆け寄った。

左腕を伸ばし、彼女の体を支える。

倒れ込んできた彼女を抱き抱えるような体勢になり、僕は水戸の顔を見た。

瞼は重りのように固く閉じていて、体は冷たい。

力も入っておらず、意識も朦朧としてそうだった。

僕は思わず彼女の手をギュッと握った。

「…はる…き……」

彼女はぽつりと僕の名前を呼んだ。

そして彼女は意識をなくした。


冷たくて小さな手、まつ毛が長く綺麗な顔、

人前では凛々しい顔をしているが優しげがあって可愛らしい寝顔…


ほんと、可愛いよなぁ……


僕は彼女の前髪を少し触って締め付けてくる心臓を少し緩ませた。


僕が彼女を守らないと。



僕は彼女の「騎士」なんだから。


_____________________


《水戸side》

目を開けるとそこは知らない天井が見えた。

横をむくと春樹と綴が心配そうにこちらを見ていた。

「…!水戸!よかった!目覚ましたんだね!!」

春樹が安心しきった顔で飛びついてきた。

「心配したんだからね…どう?体調は?」

綴が春樹をなだめながらそう問いかけてきた。

「あぁ…だいぶ楽になったよ。ありがとう。」

ふと右手で何かを握っていることに気づき、手元を見ると私は春樹の手を強く握っていた。

顔が暑くなっていく。

もしかして私…あの時からずっと…?

ぶわっと熱が出てくるのがわかった。

「み、水戸!?顔真っ赤だよ!?大丈夫!?熱!?!?」

春樹がまたまた心配そうにおでこをくっつけてきた。

「いや、えっと…手…ずっと強く握ってたみたいで…すまない。痛くなかったか?」

「へ?あ、あー!全然痛くないよ!気にしないで!!先に握ったのは僕だったし…」

春樹は照れながら頬をかいた。

やっぱりあの時私を助けてくれたのは春樹だったんだ。

綴もずっと私の傍についててくれてたんだな。

ほんとこいつら…こんな状況の中でも…

心が暖かくなっていく。

私は最高の親友を持ったなとしみじみと思った。


「ところで…ここはどこだ?保健室…じゃ無さそうだが…」

「あの後…水戸が倒れたあと、またあのモニターから少女が出てきてね。『寮があることを説明するのを忘れてました〜!各小部屋があるのでそちらで睡眠などなどしてください!鍵もかけられるのでプライバシーもちゃんと配慮してますよ!』って言って案内してくれたんだ。」

綴は裏声を使いながら説明してきた。

私を笑わせようとしてくれたのだろう。

「ぷっw綴〜裏声雑すぎ!w」

春樹がゲラゲラと笑う。

あぁ、いつもの私たちだ。

よかった。

私は少し落ち着きを取り戻した。

やっぱり…2人になら…


「なぁ、2人とも。話があるんだが…」

「ん、なあに?水戸。」

春樹と綴がこちらを向く。

「私の…役職の話なんだが…」

私は息を吸い直して2人に言った。




「私の役、『探偵』なんだ。」

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