第12話『他人』

人はみな、自分しか心から信じられるものがない。

家族、恋人、親友、友人、教師、生徒…

自分たちの危機を感じた時、あなたはまず誰の心配をしますか?

まぁ、自分だよね。自身の命だよね。


人間ってそういうものなんだから。

しょうがない事だもんね。


「ニンゲン」だからね。


《水戸side》

私たちの周りは闇に包まれた。

あたりは暗く、電気も太陽の光もない。

心臓の音とみんなの声だけが響く。

ドクンドクンドクン

心臓の音はうるさく、恐怖に包まれる。

どうしよう

どうしようどうしよう

電気は…ブレーカーは…何かあかりを…光を…

誰か…!!!

「乙羽!」

世宗の大声でガヤガヤしていたみんなが静かになった。

「な、なんや…??」

震えたか細い声で乙羽が答えた。

「水でランタンか何か作れる?もしくはなにか光になるもの…」

そうだ、それがあった。

自分たちの力を使って灯りを作ることが出来るかもしれない…!!!

「か、形なら作れるけど…さすがに光は作れへんよ…!」

光…なにか…電気…


…電気…!!


「おい、ちとせ!!」

私は大声でちとせを呼んだ。

「みとっち!?なになに!?」

「だいぶ前に雷を使えるお嬢様の友達がいるって言ってたよな!?もしかしてそれって…」

「…!!そうそう!!雷華!!ライライだよ!!」

「わ、私ですかっ!?!?」

いきなり名を呼ばれた雷華は驚いた声を出す。

「おい、雷華!!雷を使ってランプに明かりつけられるか!?」

「明かり…ですか…?」

「そう!乙羽さん!乙羽さんは充電式のランプを作ってください!!」

「じゅ、充電式…?わ、わかったの…!」

乙羽は焦りつつ水でランプを作りだした。

「で、できた…!これどうすればいいの!?」

「春樹!」

「んえ!?どうしたの水戸!?」

「春樹は上に向かって風を!ランプが浮くくらいの!」

「…!おっけい!まかせて!」

「雷華は上に向かって雷を!!」

「わ、わかりました…!!」

「乙羽さん!!ランプを上に思いっきり投げてください!!他のみんなはしゃがんで!!」

「お、思いっきり投げるよ…!!」

これで…上手くいくはず…!!

「えいっ!!投げたよ!!」

「みんなしゃがんだ!?いくよ!!」

乙羽が思いっきりランプを投げた声と同時に春樹が風をおこす。髪が思いっきり揺れる。

「き、気をつけてくださいね…!!いきますよ…!!!」

雷華の声の後、ビリビリビリと強烈な電気の音が聞こえた。

…そして

「っっ!!つきました!!ランプ!!」

雷華の声と同時に上をむくと明るいランプが空を飛んでいた。

「よし!乙羽さんは水を使ったあとで危ないので…綴!あのランプキャッチして!」

「人使いが荒いなぁ…まぁやるけどね」

「ゆっくり風弱めるよ!!綴!!」

「りょーかいっっと」

綴が見事ランプをキャッチした。

これで、あかりは着いた…!

少しだけ恐怖感が薄れていくのがわかった。

…上手くいってよかった。

「す…すごいです!!水戸先輩!!!めっっちゃかっこよかったです!!!!!」

キラキラと目を輝かせた神希が近づいてきた。

「いや…あれは黒羽先輩のおかげで…」

「いや、水戸ちゃんのおかげだよ!よくやったね!!」

世宗がまるで保護者のように水戸の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。

「さーわーらーなーいーでーくーれーませんかーー??????僕達の親友にー????」

綴がニコニコとした顔で世宗の腕をつかみ上げた。

「おっと、こりゃ失礼。」

世宗がにこりと微笑み腕を払い除けた。

「うっわー…怖いなぁ…これが上級生か…」

琴梨が小声で何かを言った気がしたがよく聞き取れなかった。

「それにしても、ほんとすごいよ水戸は!!さすがだね!」

にっこりと満面の笑みで春樹が笑いかけてきた。

ほんと、こいつは褒め上手だ。いつも何かと救われる。

「いや…別に。それより、この状況…一体どう言う…」

私がそう答えた瞬間に「アレ」は現れた。


『皆様、お疲れ様です!!いや〜あかの他人とは

思えない見事な協力プレー!これが人間!』



目の前にある大きなモニターからピンクの髪を一つにまとめた少女が突然現れた。


『でもこれで終わりじゃありません!

メインゲームはここからなのですから!!』


そう言い少女はニヤリとした顔でこちらに指をさしてきた。



『ここから出たいのなら、

ゲームをしてください。

従わなければあなた達の大切なものを

頂こうと思います。』

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