第9話『ポルターガイスト』

ぽわーん

ぷかーん

ぼわわーん

重力って不思議。

重力ってどうして存在しているのだろう。

理由は?どうしてなの?

空気も、水も…

世の中不思議なことだらけ。

だってさだってさ?

都合がよすぎるよね。空気も水も重力も。

人間に必要なものがこの世界には揃ってる。

これってさ…


まるで人間を作り出すために

用意されたものみたいじゃない?

もしかしたらこの世界は誰かの手で作られた



人間様を作り出すための実験施設なのかもね。


《春樹side》

僕達は怪しい3人を探しに保健室をあとにした。

前から、僕・乙羽さん・世宗さん・神希くん・琴梨ちゃん・水戸・綴の順番で2人ずつ縦に並んで移動していた。

水戸と綴が僕から少し離れていて心配だが水戸は綴がいるから大丈夫だろう。

そんなことを思いながら水戸の方を見ると、水戸の表情がいつもより真剣で少し怖いくらいの顔をしていた。

もしかしたら…なにかに気づいたのかもしれない。

気づいていたとしたらそれはなんだ?

移動中の違和感?それともさっきの会話内か?

移動中の違和感なら僕も気づくだろうし…さっきの会話内でも琴梨さんの発言以外特に気になることは無かった…

水戸が気づいた違和感…それは何か?そう考えていると

「…ん?」

何か変な違和感が伝わってきた。風…というより空気中から。

どこか…いつもより重苦しい感じの…重さがある空気。

「…あの、乙羽さん、世宗さん。」

「お、どうした?」

小声で2人に呼びかけた僕に便乗して世宗は小声で返事をしてきた。

「ちょっと、体制整えてください。これ、そろそろ誰かきます。」

「了解。でもなんでわかったの?気配?」

「それは…空…」

「みなさん!」

僕が話している途中に神希は小声でみんなを呼び止めた。

「ん、どうした神希?」

水戸が我に返ったかのような表情で神希を見ていると

「前…ものが…勝手に…!!ひぃ!!」

神希は涙目をしながら震えた声でそういった。

「もの?なにか見えたのか?」

騒がしい様子の神希を宥めるように水戸がそう言うと神希は少し落ち着いたのか、我々にこう告げた。

「ものが…勝手に浮いて…こっちに飛んできています!!逃げて!!」

そう神希が忠告しみんなは焦ってそれぞれ左右に身をかわした瞬間、それはもうコチラに向かってきていた。

あれって…

「跳び箱!?それにボール!?ってあぶねっっ!!」

跳び箱やボールがありえない動きをしながらこちらに襲いかかってきていた。


守らなきゃ…僕が…水戸を…綴を…守らなきゃ!!


その瞬間僕は腕をぶん回し、先程よりも大きな力を使っていた。


前方は死なない程度の圧力をかけてある。

これで敵を倒せる…

その瞬間、後ろから声がした。


「捉えた。逃がさないの。」


僕が力を使った瞬間、後ろから鎖のようなものが飛んできた。僕の風に流されながら襲いかかってきたもの達の方面へ。

突然の事で僕は考えが追いつかなくなっていた。

この鎖の正体はなんなのか。この鎖を撃ったのは誰なのか。

そんなことを考える暇もなく、フリーズしていた僕は後ろを向いた瞬間に全てを把握した。


そこには力を使っている乙羽さんの姿があった。

鎖で僕達への被害を出さないよう、バリケードを貼りその間から敵を拘束するための鎖を撃っていた。


その瞬間、僕の心の奥深くでズキッという音が鳴り響いた。


「あぁ、かなわないな。」


僕にはない力、強さの差を見せつけられたのだった。


僕はみんなへの配慮も考えられずにフリーズして…一体何をしているんだ。

これじゃあ…これじゃ2人を守れない。

誰も守れない。

ただ…


目の前で花が枯れていくのを見ているだけ。



思い出せない記憶が僕の脳裏をよぎっていた。

この感情は一体何なのだろう。

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