第8話『前に進むか進まないか』
あぁ、めんどくさい。
このあと私は疑われるんだ。
優しい優しい先輩に。
その疑いは正義そのもの。
だけど折れやすく脆い。
これは本物?それとも偽物?
私は誰を信じればいいの?
あぁ、めんどくさい。
ずっとずっと夢を見ずに眠っていたい。
《水戸side》
琴梨の話を聞いた私たちは少し冷静さが保てなくなってきた。
この中に犯人がいるかもしれない。
そう考えてしまい自分の身の危険を感じるようになった。
「ここでみんなに意見を聞きたいんだけど、いいかな?」
世宗が手を挙げ私たちに問いかけてきた。
「はい、なんでしょう?」
「今からさっき僕が言っていた女の子3人組と合流しに行くか、それともずっとここにいるか。どちらがいい?」
世宗の質問は遠回しに「このまま立ち止まるか前に進むか」と聞いてきているようだった。
この人は遠回しに痛いところをつくのがどうやら得意みたいだ。
「僕は、合流しに行きたいな。」
春樹が恐る恐る手を挙げた。
「どうしてかな?」
「どうしてって…このまま何もせずここに立ち止まるのは僕の性格的に無理だと思うしそれに相手が武器を持っていたらまた力を使えば良い。僕は風を操れるから刃物みたいにもなるしね。あと聞いておきたいんだけど、他に戦闘に使える力を持っている人っていますか?」
春樹はそう問いかけた。
すると、意外な人物から声が出た。
「私…なの。」
「乙羽さんか。なんか意外だね。どういう力か聞いても良いですか?」
「えっと、春樹…くんが風を操る力なら私は水って感じかな。水がある場所なら戦えるの。水を掴んで好きな物に変えられるの。銃でも剣でも。」
水を操る力…具現化する力…確かに春樹とは少し違うが戦闘面においてはかなり戦力になる力だ。
「あ、あの…戦うなら僕の力も使えるかもしれません。僕、すごく遠い場所まではっきり見える力なんです。」
神希も恐る恐る手を挙げそう言った。
確かに私たちと初めてであった時戦闘を止めたのは神希だった。確かにこれは役立つかもしれない。それに…止めに入ったということは神希は犯人じゃない可能性が高い。今のところは信用していいかもしれない。
「じゃあこうしよう。春樹くん、乙羽、神希くんには前に出ててもらってその後ろに僕らが続こう。僕だって盾くらいにはなれるし後ろから攻撃されてもまぁ大丈夫だろう。」
にっこりと世宗はそう言った。爽やかな笑顔でそう言っているがなかなか怖い発言をしている。
「それで大丈夫ですよ。水戸と綴はどう?」
「僕もそれでいいよ〜」
「私もそれで構わないぞ。」
「じゃあ決まりだね。さっき見つけた人影と合流しに行こうか。もしものために多少の傷薬と絆創膏と包帯は持っていこうか。」
こうして私たちは3年生2人がみた女の子3人組と合流するべく、保健室をあとにした。
《神希side》
保健室を出る時、僕は琴梨に声をかけた。
「琴梨、なにか夢は見ましたか?」
「夢…」
琴梨は下を向き、少ししたらこちらに顔を向けこういった。
「私が疑われる夢を見た。あと神希に夢を聞かれる夢を見た。」
琴梨は未来予知ができる力を持っている。
だから寝ている時、琴梨は自分が疑われる夢を見ていたことは僕も何となくわかっていた。
「そっか…ごめんね。怖い夢見ちゃったね。」
僕は優しく琴梨の頭を撫でた。
「うん…」
琴梨は少し落ち着いたのかじゃれてきた。
……
っっっっっかわいい!!!!!
なんだ!!この可愛い生き物は!!!
天使!?天使なのか!?!?いや天使以上!!女神なのか!?!?!?
あーーー!!!かわいい!!!!!
かわいいよー!ねむり姫ーー!!!
「…神希、顔がキモイよ。」
「ええっ!?ご、ごめん!!」
いかんいかん、こんなことを考えていたら琴梨に引かれてしまう…
でも…蔑んだ目で僕を見てくる琴梨…
「悪く…ないですね。」
「…なにが?」
「あ、なんでもないです!さ!行きましょ!」
僕は慌てて琴梨の背中を押し先輩たちの後に続いた。
だめです神希!なんてことを考えているんですか!
僕はそんなやばい趣味の持ち主でもないですしまだまだ純粋な男の子です!!大人の階段なんてまだ僕にははやいですよーー!!!うわー!!!
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