第3話『守りたい人』
この世界には「力」を持つ人が多く住んでいる。
僕もその1人。「力」を持っている。
嘘がわかる力…それはとても不便で不必要な力だ。
「あなたのこと好きだよ」
「俺ら親友じゃん」
すべて嘘。
「先生は君の味方だよ」
「君は悪くないよ」
全部嘘。
嘘にまみれた世界。それを知っているのは世界に僕一人だけ。
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《水戸side》
「づる…綴!!」
「!?」
「何ぼーっとしてるんだよ。ほら、行くぞ?」
「う、うん。ごめん。」
ぼーっとしている幼なじみを後ろに、私達はまた歩き出した。
それにしても、本当に妙な場所だ。
普通ならばこんな学校はすぐに立ち入り禁止の場所になるはずなのだが…どうして私達はここにいるんだろう…
私達をこんな所に閉じ込めた犯人は誰なのか。
そして動機はなんなのか…
動機
そうだ。そもそも犯人の動機はなんなのか。
私達の共通点は同じ学校の生徒、ただそれだけで知り合いというわけでもない。
なぜ閉じ込めたのか、何故私達なのか、どうして学校に閉じ込めたのか、なぜ学校がこんなにボロボロなのか…
全てが謎である。
「水戸、また何か考えてる?」
春樹の声で私はハッとした。ぼーっとしていたのは、綴だけではなく私もだったらしい。
「ごめん。ちょっと考え事してた。」
「なにか掴めた?探偵さん?」
横から綴が顔を出す。
「え!?水戸先輩探偵さんなんですか!?!?僕初めて見ました…!本物の探偵さん!!」
「え、あ、いや別に探偵ではないよ。綴が勝手に言っただけ。」
目を輝かせながらこちらを見てくる神希に私は慌ただしく否定した。
「もし私達がここにいる意味…閉じ込めた犯人がいると仮定して…動機は一体何なのかを考えていてね。」
「動機か…確かに俺ら、同じ学校の生徒ってだけで他に接点ないよね。生徒同士でも知り合いってわけではなかったし。」
「確かにそうですね…どうしてでしょうか…」
春樹と神希がうーんと唸らせながら言った。
「…誰かなんかやらかした?w」
「「!?!?!?何もしてないよ!?!?」」
綴の冗談に二人は思いっきり反応した。
こんな状況の中、なぜだか少し安心する。
綴の冗談のおかげなのか、二人がバカ素直だからなのか…
少し心臓の音がゆっくりになった気がした。
私がみんなを…守るために、いち早く真実を見つけなくては。
心の奥深く、水戸はそう決意した。
《春樹side》
僕と水戸と綴は、小さい頃からの幼なじみだ。
小さい頃の僕は泣き虫で怖がりでひ弱だった。
友達を作るのも苦手で、一人で野原で花かんむりを作っていた。
そんな時に声をかけてくれたのが、水戸と綴だった。
それから僕は救われた。
毎日が楽しくて、時間があっという間に過ぎていく…そんな毎日がただただ幸せだった。
僕は二人が大好きだ。
今でも…ずっと…
だから僕が守らなきゃ。
二人が僕を救ってくれたように。
筋トレを始めたのも、運動をするようになったのも、二人を守るためだ。
そのためなら…僕は "なんだって" やってみせる。
たとえ誰かを犠牲にしても…
「ねぇ、春樹。」
「ん?どうしたの、水戸。」
「もし…もしもだよ?この学校から出れなかったら…どうする…?」
水戸の指先が震えている。
彼女は怖がっている。
でもそれを神希くんや琴梨ちゃんに見せないようにして、僕に話しかけている。
「そうだな…もしそうなったら…」
「…?」
「僕がみんなを…守るから。」
水戸の手を掴んで。目を見て。ちゃんと伝える。
心臓が早くなるのがわかる。
水戸の震えも少し納まった気がした。
「…ありがとう。あと一つ…いい?」
水戸も僕の目をじっと見つめて…低い声で僕に言った。
「もしこの中に…私達が出会う人達の中に…犯人がいたら…どうする?」
《綴side》
いや~びっくりだよね~。
ほんと、水戸って色々考えすぎ!頭回りすぎ!
てかなんで俺に言わないで春樹に言うの!?
ばーかばーか!!あっかんべー!!
…っと。さすがにそろそろやめないと「ただのやんちゃボーイ!」とか思われちゃいそうだね。
俺の一人コントショーは今回はここまでね。
俺は耳が良い方だ。
それは水戸も春樹も多分知らない。
だから今、水戸が言っていた「この中に犯人がいるかもしれない。」という推測も耳に入ってきた。
春樹はどうせ「僕が守るよ。」って言っているんだろうな〜…ほんと、あいつらしい。
けど…あいつは自分の命のことを最優先にしない。だから俺もちゃんと周り見とかないとな。
今のところ水戸も春樹も特に異常はないし、さっき会った一年生二人組、あの子たちも特に怪しい動きはしてないな。
全員これといって怪しいことは無い。
君は誰が犯人だと思う?
水戸?春樹?一年生二人のどちらか?それとも
俺だったりして…?
な〜んてね!俺こういう堅苦しい感じ苦手だからこの話やめてもいい?飽きてきちゃったし。
じゃあそろそろ、
俺の心のなか除くの
やめてよね。
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