第2話『姫と騎士』

「……誰かいる。」

春樹の声が広間中に響き渡った。

前の方をよく見ると人影があった。

遠くてよく見えないがおよそ2名。

男の子と女の子の影だ。

「もしかしたら敵かもしれない。綴、水戸のことよろしく」

「わかった。」

綴は春樹の指示通り私の腕を掴み瓦礫の後ろに身を潜めた。


怖い


その2文字が私の脳をよぎる。体が震え出す。

もし敵だったら?春樹が怪我をしたら?もし春樹が……負けたら?

怖くなって震えが止まらない。どうしよう。どうしよう。

「水戸。」

綴の声。

この声…あれ…?

「大丈夫だから。大丈夫。俺もいるから。」

綴は細い腕で私を守るように包んだ。


そうだ…春樹なら…綴なら…私たちなら…絶対に負けない。

私は綴を信じ、春樹の横顔を見つめた。



《春樹side》

男女二人…俺よりも身長は低いか…?

2人なら風で水戸たちを守りながら囲んで仕留めるか…?

水戸を守るには、綴を守るには、どうすればいいのか…ただただそれを考えるのに必死だった。


風がざわめき始めた。

…くる!


「\パァンッ!!!/」


広間中に響く音。


「じゅ、銃声!?」

「春樹!!!」


幼なじみの声…


僕は2人を守るために…一緒にいなくちゃ…!!


両腕に力を込める


2人を…守るために!!!!!


「オラアアアア!!!!!!!!」


2人がいる逆の方向、右側に向かって、薙ぎ払うように…!!!!!


「ちょっとまってーーー!!!!!」

弾が右側の壁にぶつかった瞬間、少年が大きく叫んだ。

「…え?」

「…ん?」

「…なにあいつ。」

俺、水戸、綴の順で反応した。

遠くから少年のような影がこちら側に走ってくる。

「ぼ、僕達敵じゃないですー!!!」

少年がはっきり見えた時、一瞬で状況が把握出来た。

「あれ、うちの生徒?」


俺たちとおなじ、この学園の生徒だった。



「こら!琴梨!ごめんなさいは?」

「…ごめんなさい。」

先程銃を撃ったのは少女の方だった。

「別に構わないよ。誰も怪我はしてないし…それよりなんで拳銃を?君たちは?」

「護身用で~す」

「えっと、彼女は睡蓮 琴梨(すいれん ことり)。

僕の主(?)です!」

「主って言っても友達のように接してるけどね~。あ、ごきげんよう琴梨です~。ぶいっ。」

琴梨と言う少女はおでこの横で両手のブイサインをした。

「で、僕は舞奈華 神希(まなか じんき)と申します!!覚えにくい名前ですが何卒よろしくお願いします!!」

神希と言う少年は礼儀良く一礼した。

「僕達はこの学園の1年生です!!でも少し前のことが思い出せなくて…気がついたらこの場所にいて…うーん…」

やはり彼らもこの状況を把握出来ていないらしい。

「大丈夫。俺達もだからさ。一緒にいた方が安全だし、みんなで出口を探そっか!!」

「いいんですか!?ありがとうございます!!ほら、琴梨も!」

そう言った瞬間、琴梨の体の力は全て抜け床に倒れ込んだ。

「琴梨ちゃん!?!?大丈夫!?!?琴梨ちゃん!!!」

水戸が心配してゆさゆさと彼女を揺らす。

「あ、大丈夫です!!これは寝てるだけなので!!」

「ね?」

「て?」

「るの?なんで?」

またまた同じ順番で俺らは不思議に思った。

「琴梨の力は『予知夢』なんですよ!!寝ることによって未来での出来事がわかるんですよ!!」

自分の事のように自慢げに神希は話した。

「よいしょっと…あ、僕の力は千里眼です!!なので先程春樹先輩の姿が見えたんですよ!!」

神希は琴梨をおんぶしながら言った。

「琴梨は僕が連れていくのでご心配なく!!さ!行きましょ!!」

「そ、そっか…」

水戸は苦笑いしながら歩き出した。



「春樹、ちょっと来て。」

「綴?なに?」

「腕。使っただろ。」

あ…怒ってるこれ…怒ってるやつだこれ…

「大丈夫だって!!ほんとに!!ね?嘘ついてないで「ドンッッ」ひっ!」

綴からの怖い壁ドンをくらった。

「お前…次使ったら…どうなるか分かってる?」

「な、なんのことでしょうか!!?」

「春樹…俺知ってるよ?春樹のベッドの下…」

「あああ!!??あっあれは!!」


俺の極秘の…筋トレメニュー!!!

あれを見られたら最後だ。俺の人生は終わる。

水戸に知られたら?やばいやばいやばいやばい


「いいのぉ~?バラしても?w」

ニヤニヤとしながら綴は俺を挑発してくる。

「だだだだだだだだめですっっっっ!!!!」

「なぁ~らぁ~?どうすればいいと思う~?」

「力はしばらく使いません!!」

「よろしい。」

地獄の綴のお説教タイム…確かに綴は怖いけどそれよりも怖いのは脅しだ。なんでやつだ。てかなんで知ってるんだよ。


「おい春樹、どうした?顔色が悪いけど」

「あぁ水戸…はは…なんでもないよ…」

「綴になんかされたか?」

「そ、それは…っっひっっっ!!」

綴がにっっっっこりとした顔をしてこちらを見ている。

「な、なんでもないです!!!!」

「先輩達仲が良いんですね🎶」

「そうですね!!!!」

「春樹が壊れた!!!」

大騒ぎしながら俺達は広間から抜け出した。




《???side》

「イマのトコロ、ジョウキョウはかなりヨイですね ̄コノツギもジュンチョウにススンデもらえルとタスカリますマスター▼」


「うん。任せといてよ。って言ってもこの後からは彼女たち次第…だけどね」


「マスターはホカに何かネライがあルのですか?▼」


「さぁね。」

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