Day10「手を繋いで帰ろうか」/誰かさん
結局、由真が好きなのは誰なのだろう。何だかんだあって或果も梨杏も仲間になったけど、私たち三人が同じことを考えているのはわかる。
一緒にいた時間が一番長いのは梨杏。幼馴染みだから、小さな頃から由真のことを知っている。でも最初は由真を心配するが故に由真のやることに反対していた。
或果は、多分由真が撃たれそうになったら庇うんだろう。そのくらい由真のことが好きなのは見ればわかる。でも或果は由真のことが好きすぎて見えていない部分もある。
じゃあ私はどうなんだろう。アイスカフェラテのストローを回しながら考える。由真を計画に引き込んだのは私。でも
でも、悪いのは由真だ。この中に本命がいるならその子にだけ優しくすればいいのに。みんなに優しいということは、全員友達の延長線上なのか、それとも全員本命なのか。はっきりさせてほしい。
別に二人を出し抜きたいわけではなくて、むしろそんなことをしている余裕なんてないだろうってら言われてしまったらそれまでだし、由真のためにはこのままの方がいいのかもしれない。信頼できる人は複数いた方がいいだろうし。でも、どうしても気になってしまう。一番だって二番だって三番だっていい。でも自分がどこにいるか知りたいのだ。
「……寧々?」
不意に由真が私の名前を呼ぶ。
「なに?」
「いや、何か考え事してるみたいだったから、何かあるのかなって」
そういうところには気付くくせに、私の気持ちには思い当たらないのか。私は頬杖を突きながら少し薄くなったアイスカフェラテを啜った。
「まあ、誰かさんのせいだよね」
梨杏と或果は何となく気が付いているようなのに、由真だけが首を傾げている。ここで由真がいなくなったら三人で盛り上がってしまいそうだ。人のことを惹きつけておいて自分にはそんな魅力が無いなんて思っている誰かさんのことなら、文句だけで小一時間話せるだろう。
「計算高い女より無自覚な女の方が実はタチが悪いって言うよね」
「何の話?」
「……だから誰かさんのことだよ」
この分だとしばらく気付かないだろう。もしかしたら一生このままかもしれない。でもずっと由真が気付かないままで、私がそれで臍を曲げる日があるということは、今日の次にちゃんと明日が訪れるということだ。
それならそれで幸せなのか――いや、やっぱりそんなことない。わからずやの由真には後でキスくらい請求したって誰も怒らないはずだ。
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