Day7「夕陽1/3」type-A/秋は夕暮れ
秋は日が暮れ始めるのが早い。最後のチャイムが鳴り終わった頃には、空は真っ赤に染まっていた。私は階段を昇って校舎の屋上に出た。
この世界と自分自身があっていないような、上手く噛み合っていないような感覚がずっとあった。でも別の世界に本当の私がいるわけではなくて、私はここにしかいなくて、けれどそれは実在するわけではないただの仮想現実。そんな世界なら確かに怪我なんてするはずがない。プログラムされた痛みだけが与えられるけれど、傷つくべき体が存在しないのだから。
そして
錆びた匂いがするフェンスに手をかけて、向こう側の景色を眺める。この辺りで一番高い建物がこの学校だから、海の方を見れば沈み始めた夕陽まで遮るものはない。
夕方になると空は赤く染まる。秋は夕暮れが早く訪れて、季節が移ろいゆくことを知らせてくれる。けれどその全てが作られたものだとしたら? 私の見る景色のどこに本物が存在するのだろう。綺麗な景色だと思うけれど、それだけだ。何を信じればいいのかもうわからなくなっている。
こんなときは一人になって、ただぼんやりとしている。それだって本当は推奨されてはいない。私たちは
それでも、夕陽まで遮るものがないこの景色を見て、何故か込み上げてくるものは嘘じゃないと思っていたい。ここに在るものすら全て存在しないなら、どうしてこんなに苦しくなるのだろう。
昼間の太陽は明るすぎて、見たくないものまで照らしてしまうのに、全てを紅に染める夕陽はどうしてこんなに綺麗なのだろう。景色は少しずつ夜の色を滲ませるけれど、私は太陽が完全に沈むまでずっと、その場から動けずにいた。
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