2-11(金)しゃせい大会デース!!
「由紀恵、相談がありますデース」
「うわぁつきゃぁぁああぁっ!!」
深夜のベッドにいつの間にかリンダが忍び入っていた。
何となく目を覚ました私に開口一番リンダはそう言う。
「リ、リンダぁ!?」
あー驚いた。
いきなりベッドに入っているのだもの、一瞬お化けか何かと思っちゃうじゃない!?
「由紀恵、私悩みありますデース。あまりにも悩んでしまって眠れないデース」
「リ、リンダ。何なのよこんな夜更けに!?」
「私、友也の事で悩んでいるデース」
えっ!?
私は一気に眠気も何も吹き飛んだ。
リンダがお兄ちゃんの事で悩んでいる!?
それってまさか!!
「友也ステキと思いマース。でも友也もするのデースか?」
「えっ? ええっ? な、何をするってのよ!?」
リンダは彼女にしては珍しく言い淀んでいる。
そして赤くなりながらもじもじと言い始める。
「その、みんなするって聞きましたデース。でもそんな恥ずかしい事するのデースか?」
い、一体何をするってのよ!?
もじもじするリンダに私も完全に目が覚めいろいろと想像してしまう。
お兄ちゃんがする?
みんなもする?
そんな恥ずかしい事?
い、一体何をするってのよ!?
「リ、リンダ何をするっていうのよ?」
「そ、それは、しゃせぇ‥‥‥ あー駄目デース!! やっぱり恥ずかしくて言えないデース!!」
リンダはそう言っていきなりベッドから降りて行って自分の部屋に戻っていってしまった。
一人取り残された私は閉じられた扉を見ている。
「お兄ちゃんがする恥ずかしい事って‥‥‥ 『しゃせ』何とかって…‥‥ えっ? ま、まさかぁっ/////!!!?」
ぼんっ!
私は頭から湯気を出し真っ赤になる。
「そ、そんなっ! あああ、でもお兄ちゃんも男の子だし、高校生だし、お年頃だしぃっ!!」
私はその後全くと言っていいほど眠れなかったのだった。
* * * * *
「おはよう、うーん、よく寝た。おかげですっきりだよ!」
お兄ちゃんが私が洗面所で顔を洗っているとそう言いながら入って来た。
す、すっきりぃっ!?
ぼっ!!
途端に真っ赤になって頭から湯気を出してしまう私。
「お、おはようかな? あ、私終わったからあっち行くかな?」
「ん? どうしたんだ由紀恵、顔真っ赤じゃないか? 熱でもあるのか?」
そう言ってお兄ちゃんは私のおでこに手をあてる。
そう、右手をっ!!
お、お兄ちゃんが私のおでこで右手が私にぃっ#$%&!?
「だ、だめぇっ! 私たちにはまだ早いわっ!?」
私はそう叫び一目散にリビングへと逃げていく。
そして用意されていた朝食の食パンだけ咥えてその場を飛び出す。
「由紀恵、私も行くデース!!」
同じように少し顔を赤くしてそわそわしていたリンダが私と同じようにパンをくわえ慌ててついてくる。
「あらあら? 由紀恵、リンダちゃんもう良いの?」
「お母さん今日はちょっと用事があるから先に行っているってお兄ちゃんに言っておいて!」
「言っておいてデース!」
そして私たち二人は慌てて玄関を出るのだった。
* * *
「おはよぉ~由紀恵ちゃん、リンダちゃん~」
食パン咥えて曲がり角で誰にもぶつからず無事紫乃と合流した。
「今日は早いねぇ~、あれ? 友ちゃんは~?」
びくっ!
びくびくっ!!
思わず私とリンダは反応してしまう。
「あ、その、お兄ちゃんは後から来るわよ/////」
「と、友也も朝から「すっきり」って言ってたデース/////」
リンダはどうやら洗面所での私たちのやり取りを聞いてたようだ。
私たち二人は真っ赤になって下を向いて歩いている。
「ん~? どしたの二人とも~?」
紫乃はいつも通りであたしたちに聞いて来た。
しかし言えない。
そ、そんな恥ずかしい事!
「紫乃、やっぱり友也もするでですかデース?」
「ほえ? 何を?」
言えないって言ってるでしょうにぃっ!!
リンダはそれでも紫乃におずおずと聞く。
「今日学校でその、しゃ、『しゃせい大会』するって聞きましたデース!! JAPANクレイジーデース!! そ、そんな事学校でしちゃうなんてすごすぎますデース!!」
真赤になって頬に手をあてリンダはいやんいやんと首を振る。
「へっ? 『写生大会』??」
「あ~、そう言えば今日は全校一斉の『写生大会』だったねぇ~。忘れてたよ~」
え?
ええっ?
「写生大会」??
まさかリンダ!?
私はリンダを見る。
そしてスマホの和英アプリを開いて日本語を入力する。
急ぎリンダをとっ捕まえてその画面を見せる。
「リンダ、もしかして大きな勘違いしていない!?」
「もう、JAPANクール過ぎるデース! 有り得ないデース! でもちょっと興味あるデース!!」
未だあっちの世界で煩悩全開なリンダを捕まえ無理やりスマホの画面を見せる。
そして気付いたリンダはその場で固まる。
「あ? あ、ああああぁ!?」
「リ、リンダ、こっちの『写生大会』だからね! みんなも確かにするし、お兄ちゃんもやらなきゃならない事よ。でも違うからね、あっちのじゃないからね!!!!」
ぅわぁぁあああぁぁぁぁぁぁっ!!
珍しくリンダはその場で真っ赤になってうずくまる。
そりゃあそうだろう。
とんでもない勘違いをしていたのだから。
「あれぇ~? リンダちゃんに紫乃ちゃん、由紀恵様じゃん、おはよう! 何こんな所でしてんの?」
見れば下僕その一の太田剛志だった。
「なんでもないわよ」
「なんですか~由紀恵様相変わらず女王様なんだから~。あ、今日の『写生大会』勘違いしちゃだめですよ~、なんたって‥‥‥ ぶぎゅるぅ!!」
こいつの下ネタトンデモ話を最後まで言わせず私は最終奥義カバン落しを喰らわせる。
もうこれ以上喋らせないために!!
「由紀恵~デ~ス」
「ま、まあ今日は上手に絵を描く事ね」
私とリンダはまだ顔を赤らませたまま登校するのだった。
あ~、驚いた!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます