2-10(木)お寿司初体験デース
「うふふっ、久しぶりにお外ご飯~♪」
私は浮かれていた。
だって久しぶりにみんなで外食なのだから。
しかも今日はリンダ初体験のお寿司!
最近お肉が多くていい加減に魚が食べたくなっていた。
「OH-! お寿司初めてデース! 廻るお寿司行きたいデース!!」
「はいっ?」
お父さんがもう少しで帰って来る。
そして本当に久しぶりにいつも行っているお寿司屋さんに行くつもりだった。
あのお寿司屋さんは昔から行っていた所でどう言うルートか新鮮なネタが豊富でとても美味しいお店だった。
しかし今リンダは「廻るお寿司」と言った?
「リンダ、今日行くお店はちゃんとした廻らないお寿司のお店よ!?」
「OH-! それはとてもお高いデース! それに万が一にも私が生魚駄目だったら食べるモノないデース! 廻るお寿司最悪ヌードルありマース。から揚げも有ると紫乃言ってましたデース!」
うっ、紫乃の入れ知恵か!?
「あらあら、そう言えばもしリンダちゃんが生モノ食べれなかったら大変ねぇ~。じゃあ、今日はやっぱり予定を変えてリンダちゃんの言う通り廻り寿司にしましょうかしら?」
お母さんはそう言って最近使い慣れ始めたスマホでいつの間にか入れていたアプリで廻り寿司のお店を予約する。
「あぁーっ! そんなぁ、せっかくのお寿司がぁ‥‥‥」
「まぁまぁ、良いじゃないか。俺、廻り寿司も結構好きだぞ?」
いや、確かに美味しいのもあるの知っているけどせっかくの外ご飯がぁ~!!
お兄ちゃんの賛同もあって結局今日は廻り寿司になってしまった。
お父さんも帰って来てちょっとがっかりしていたけど、帰りはお母さんが運転するからお酒飲んでいいと言う事になって承諾をする。
そして一同お父さんの運転する車で移動するのであった。
* * * * *
平日だと言うのに到着した廻り寿司のお店は混んでいた。
「何これ? 平日なのになんでこんなに混んでいるの!?」
「あ~、なんかのキャンペーンしているな? 子供連れが多いね?」
お店の中を見渡すと家族連れのお客さんであふれている。
平日なのにね。
「予約して正解ねぇ、リンダちゃん、このお店が良かったの?」
「はいそうデース! ママさんちゃんと入れたアプリで予約出来ましたデース! これですぐに入れるデース!!」
なにそれ?
もしかしてリンダがお母さんと事前にここに来る事を結託して仕組んでいた!?
おのれリンダ、謀ったな!?
とは言えリンダの言う事も一理あるのでせっかくのお高いお寿司が食べられなかったらもったいない。
今日は仕方ないから変わり種含めて色々食べてみよう。
予約だったのですぐに案内されてテーブル席に落ち着く。
ここは廻っているお寿司以外はタッチパネルで注文するシステムで食べ終わったお皿はレーン下の所に穴があって入れると勝手に回収してくれるお店。
そして何回かに一回液晶画面が変わり色々なアクションのくじ引きが有って当たるとレーン上のガチャポンが出て来るお子様にとっても人気のお店。
更にここのもう一つの売りがいろいろと変わる変わり種のお寿司。
最近はカレーライスなんてのまであるからもうお寿司屋さんでなくてもいいんじゃないかと思ってしまうほど。
「さて、それじゃあ頼むけど、リンダちゃんどのお寿司挑戦してみる?」
「OH-! 友也に任せるデース! 食べやすそうなのお願いデース!!」
お兄ちゃんに言われリンダはお任せで注文をしてみる。
とりあえず安全そうな卵とエビ、マグロ、そしてハードルが高いかもしれないイカあたりの定番を注文する。
二貫ずつ乗ったお皿がもう一つあるレーンの上側から届いた。
お兄ちゃんはさっそくそれを取ってあげてリンダの前に置く。
「OH-! とうとう私お寿司初デビューデース!」
そう言いながら食べ方をお兄ちゃんに聞く。
お兄ちゃんはお茶をみんなに配りながらお箸も配ってお醤油入れを差し出す。
「そうだね、このお醤油を少しかけてお箸でつまんでこう、ポンと口に入れる感じかな?」
実際にリンダの前でマグロにお醤油を少し垂らしてお箸でつまんで口に運ぶ。
リンダはそれを興味深く見ていて首をかしげる。
「お寿司手で食べないのデースか? 平面ガエルは仕方なくても眼鏡のお兄さん手で食べてましたデース!」
何の話だろう?
でも手で食べるのってお高いお寿司屋さんではするけど廻り寿司ではやった事無いね?
なんでだろ?
「手で食べても良いけどその都度拭くのが大変だからね、面倒だからお箸でポンの方が楽だよ?」
お兄ちゃんはそう言って次の品を注文する。
みんなも廻っているのを取ったりタッチパネルで注文したりと。
「では食べてみますデース!」
リンダは恐る恐るマグロから行く。
お兄ちゃんと同じく醤油を垂らしお箸でつまんで口にポンっと‥‥‥
「もごもご‥‥‥ ごくん。OH-! なんだかミディアムレアの焼き加減のお肉のように少し血の味がするデース。でもこれなら大丈夫デース!!」
そう言ってリンダは次のエビも卵も食べる。
この辺は完全に生では無いので意外とすんなり食べられたようだ。
そしてとうとう問題のイカに行ってみる。
「由紀恵これなんの魚ですかデース?」
「ああ、これってイカよ」
「イカ? どんな魚デース?」
私はスマホでイカを検索して画像を見せる。
途端にリンダは驚く。
「OH-! デビルフィッぃーシュっ!! これ触手で大変な奴でーす!!」
触手って、なにそれ?
「由紀恵が操がピンチデース!!」
なんで私なのよ!?
それに操がピンチって何っ!?
「これ、食べれるデースか?」
「意外と歯ごたえあって美味しいんだよ?」
お兄ちゃんもイカを食べている。
するとリンダはその様子を見ながらお兄ちゃんに聞く。
「友也この魚好きデースか?」
「うん? 好きだけど?」
「なるほど、すると食べ過ぎると友也このイカの匂いになるデースね?」
おいこらリンダ!
わざとか?
わざとでしょ!?
何こんな所でトンデモネタぶちかましているのよ!!
リンダはイカにお醤油を垂らしてつまんだまま睨んでいる。
そして意を決したようにそれを口に放り込む。
「ぱくっ! もごもご‥‥‥ もごもご‥‥‥ もごっ、 ごくん!」
少し眉にしわを寄せていたけど咀嚼して飲み込んだ。
「うーん、私これちょと苦手デース。白いのがねっとりと舌に絡んで飲み込んでも喉でからむかのようで少し生臭デース」
いや、言い方がなんか引っかかる‥‥‥
でもやっぱりこう言ったのはダメだったかな?
「じゃあ、後は白身魚の方が食べやすいかな? カレイとかスズキなんかは癖が少ないしね。あとはそうだなあ‥‥‥」
「とりあえず無理しないで食べれそうなものから行きなさいよ。試してみたいのは私と半分こしていればいいじゃない?」
一皿二貫が多いから半分こで食べれば私もいろいろなのが食べれる。
リンダは嬉しそうに頷きやはりと言うかハンバーグとかテンプラとかカルビとかの変わり種を頼んでいた。
そしてひとしきり食事を楽しんでいたらリンダがお皿を入れてくじ引き画面に。
「OH-! 残念デース、また外れデース!」
「いや、猫ちゃんが出てきたぁ!!」
見れば外れになると思ったら近くにいた黒の子猫ちゃんが破れた金魚すくいのフォローに入って金魚をすくいあげ、当たり画面に!
がこんっ!
レーンの上にあったガチャポンが動いてカプセルが出てきた。
お兄ちゃんはそれを取ってリンダに渡す。
「はい、リンダちゃん。リンダちゃんが当てたからこれはリンダちゃんのね」
「OH-! 好いのですか友也デース!?」
「良かったじゃない、せっかくだからもらっておきなさいよ、リンダ」
あたしに言われリンダは嬉しそうにそれを開ける。
中身は缶バッジだった。
絵柄が最近人気のある鬼退治の男の子の漫画の絵柄。
「OH-! これ本当にもらっていいデースか!?」
「勿論いいよ」
「やりましたデース! 明日紫乃に自慢するデース!!」
まさかこれが目的じゃないでしょうね?
かなり興奮するリンダを見ながらあたしはデザートのパフェを食べる。
うん、これって美味しい。
なんだかんだ言って今日はリンダの初お寿司デビュー。
苦手なものもあったけど意外と平気で食べてたな?
楽しそうなリンダを見ながら食事を終わる。
そしてお会計でお母さんが会計カウンターに行くとリンダが一緒に付いて行く。
お母さんのスマホをお店の人に見せると後ろから何やら取り出してリンダに渡す。
リンダはまたまた大喜びでそれを持ってこちらにやって来る。
「やりましたデース! スマホ会員限定のクリアファイルもらいましたデース!!」
「はぁ? 何それ?」
嬉しそうなリンダはそのクリアファルを見せてくれる。
それはさっきの缶バッジの漫画のやつ‥‥‥
見ればお会計の所でリンダと同じく子供たちがはしゃいでいる‥‥‥
みんなクリアファイル持って‥‥‥
「友也と由紀恵の分ももらえたデース!!」
えーと、まさかリンダこれを狙っていたの?
「えーと、こっち由紀恵デース」
渡されたクリアファイルを見ると蝶々の様な髪飾りの奇麗な女の子の絵が描かれていた。
何となくリンダのを見るとピンク髪で胸元が開いている胸の大きな女の子の絵柄‥‥‥
「リンダ、ちょっと待ちなさい。これはどう言う事?」
「由紀恵と同じサイズデース!」
「リンダぁっ!!」
お店の店先で私の叫び声がこだまするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます