2-9(水)カラオケはみんなで楽しくデース
「しょっと、はい次の人!」
大合唱から始まったカラオケ歌合戦は順番を決め一人一人採点マシーンで数値を争い合っている。
そして暗黙の了解の中、最後にお兄ちゃんとデュエットするのは一番の高得点者!
既に私たちの戦いは始まっていたのだ!
「な、なかなかやるわね、高橋先輩」
「みんな結構うまいねぇ~。私泉先輩があそこまで声出して歌うの初めて見たぁ~」
そう、この場でお兄ちゃんとのデュエットの為あの泉かなめでさえしっかりと歌を歌い意外な事に現在までで一番の高得点を取っていたのだった!
「あ~、七十九点ですか? おかしいなぁ、結構自信あったのに」
矢島紗江が歌い終わり点数が表示される。
高橋静恵が八十七点、そして泉かなめがなんと九十二点!
十八番の歌をみんな駆使して高得点を狙うも今のところ九十点越えは泉かなめただ一人。
しかしお兄ちゃんとのデュエットは渡せない!
「次は由紀恵の番デース!」
タンバリンやら鈴を持っているリンダはノリノリで合いの手を入れている。
当人はものすごく楽しそうだ。
「よぉしっ! 行くわよ!」
私は廻って来たマイクを握り既に歌詞を見なくても歌えるお得意の曲を披露する。
「おぉ~、流石由紀恵ちゃん、うまいねぇ~」
「OH-! 由紀恵上手デース!」
紫乃もリンダも応援してくれる。
ふふっ、この曲だけは誰にも負けない自信があるのよ!
ジャンっ!
最後に小気味いい演奏が終わって私は歌い終わる。
さあ、泉かなめ勝負よ!!
採点マシーンの数値が出るのを固唾を飲んで見守る。
そして‥‥‥
「九十二点!?」
「‥‥‥私と同じ」
何と泉かなめと同点だった。
くぅうぅ、今日は結構うまく歌えたと思ったのに!
ビブラートか?
それともサビの部分か?
どれもこれも上手く歌えたと思ったのに!
「みんな凄いデース! それでは私も歌うデース!!」
最後に回って来たマイクをリンダは握りすっと立ち上がり曲をスタートさせる。
そして歌い始める。
「えっ?」
「おおぉ~、リンダちゃんそれ行くかぁ~」
選曲していたのは日本のアニメの歌。
結構昔のだけど私も小学生の頃には大好きでよく紫乃と一緒に見たあのアニメ。
そしてリンダは歌い出す。
その歌声を聞いて私たちはまたまた驚く。
「なにこれ!? あのアニメの歌声そっくり!?」
「それだけじゃないよ~! 難しい日本語の所も完璧だよ~!!」
思わず聞き入ってしまう。
凄い、まるで本人が歌っているかのようだ。
そしてリンダは歌い終わる。
パチパチパチ!
思わずみんな拍手をしてしまった。
それほどリンダの歌はうまかったのだ。
「えへへへへ、みんなありがとうデース、でもちょっと恥ずかしいデース」
「いやいや、リンダちゃん凄く上手だったよぉ~」
「ほんと、リンダちゃん上手かったよね?」
「驚いた、日本語も上手だけど歌も上手だったのね!」
「凄い凄い!」
みんなにそう言われリンダは嬉しそうだった。
そして採点マシーンは‥‥‥
「九十九点!」
何それ!?
今まで見た事の無いほどの高得点!?
「うわぁ~、これは負けたわ」
「凄いですねリンダちゃん!」
「‥‥‥すべて完ぺきだった」
高橋静恵も矢島紗江も泉かなめも流石にこれには負けを認める。
勿論私も‥‥‥
「負けたわ、リンダ。あなたってすごいわね?」
「OH-! みんな凄いデース。私この歌しか歌えないデース。ずっと日本の歌これだけ歌ってましたデース」
少しはにかんでリンダはそう言うけど凄いのは凄い。
私たちは小さくため息をついてマイクをリンダに渡す。
そしてもう一つのマイクをお兄ちゃんに渡した。
「さあ、リンダ。あなたの勝ちよ。お兄ちゃんとのデュエットはあなたのモノよ」
あたしはそう言って素直にコントローラーを渡して選曲を促す。
しかしリンダはコントローラーを受け取らずもじもじしている。
「友也と歌うのも悪くないデース。でも私日本の歌あれしか歌えないデース」
「じゃあ、俺と一緒に歌おうよ、リンダちゃん! 俺がエスコートしてぇ‥‥‥ ぶっ!」
しゃしゃり出る下僕その一を高橋静恵と矢島紗江、そして泉かなめが黙らせる。
しかし未だにリンダはもじもじしている。
なんだろう?
いつものリンダらしくない。
「私、由紀恵とデュエットしたいデース。まだ練習中のこの歌一緒に歌うデース!」
そう言ってリンダはコントローラーを操作してその曲を入れる。
そしてイントロが始まる頃お兄ちゃんがマイクを私に渡して来る。
「由紀恵、一緒に歌ってあげなよ」
「お兄ちゃん?」
「こっ、この曲はっ~!」
マイクを受け取り最近紫乃がよく聞いているこの曲を私はリンダと間違いながらも楽しく歌う。
それはとても楽しい時間になった。
「ふうぅうぅぅっ! 由紀恵とデュエットデース!」
「うまく歌えなかったけど、これもアニメの歌なの?」
「由紀恵ちゃん、知らなかったの~?」
紫乃は驚いたように言う。
そして矢島紗江は少し赤い顔で私たちを見ている。
何となく気になって聞いてみる。
「矢島先輩、どうしたんですか?」
「い、いえですね、この曲のアニメって‥‥‥ そ、その、女の子同士がとっても仲が良いお話のアレで‥‥‥」
「はぁ?」
「そうなんだよねぇ~、リンダちゃんと由紀恵ちゃんが歌ってるとあのシーンが思い出されるよぉ~」
「はぁ??」
矢島紗江も紫乃もそんな事言いながら少し顔を赤くする。
一体どんなアニメよ?
「リンダ、この曲のアニメって知ってるの?」
「OH-! 勿論デース! 由紀恵そっくりの黒髪の美少女出て来まーすデース!!」
「はぁあぁ????」
にこにこ顔で私に投げキッスするリンダ。
思わず後ろで数名が黄色い声をあげる。
その中に矢島紗江と紫乃も入っていた?
そして楽しい時間はルームサービスの電話で終了を告げるのだった。
* * *
「いやあぁ楽しかったね~」
「まあ悪くはなかったけど、私が最後にリンダと歌ったあの曲って何? そのアニメってどんなアニメよ?」
帰りの中、私たちは雑談しながら歩いている。
すると紫乃はあたしの顔を見てまじまじと言う。
「あのアニメ、女の子同士がとぉ~っても仲良くって将来結婚を誓うお話だよ~」
「はぁいっ?」
私は思わず間抜けな声を出す。
そして慌ててリンダを見る。
それに気づいたリンダはにっこりとこう言う。
「由紀恵はワタシの嫁デース!!」
「リ、リンダぁっ!!!!」
思わず叫んでしまう私だったのだ。
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