2-8(水)放課後のカラオケデース


 リンダが日本に来てだいぶ慣れ始めた。

 いや、まるで前から居るかのようにクラスにも馴染んでいる。



 「ねえリンダちゃんってカラオケ行ったことある?」


 「そうそう、オーストラリアってカラオケあるの?」


 「どんな曲歌うの?」



 後ろのリンダの席に本日の授業が終わってクラスの女子たちが集まり雑談をしている。



 「OH-! そう言えばワターシ、日本に来てカラオケ行った事無いデース! オーストラリアにも有りマース。でも演奏を店の人しますデース!!」



 いや、それじゃぁカラオケじゃないじゃん!!



 思わず突っ込みを入れそうになる私。


 しかし私はカバンに教科書とかを入れながら帰る支度をする。

 今日は体育館の使用関係でお兄ちゃんの部活は基礎体力作りだけ。

 比較的早く終わるから見学に行こうかと思う。



 「と言う訳で、由紀恵ちゃんも参加ね~」



 がしっ!



 「由紀恵はワタシの可愛い妹デース! 姉の命令は絶対デース!!」



 がしっ!



 「へっ?」



 「あ、長澤さんも参加ね~」


 「結構大所帯だけど学割の時間だから大丈夫ね!」


 「じゃあ行きましょ!」


 クラスの女の子たちもそう言って私は紫乃とリンダにつかまったまま連行されるのであった。



 * * * * *



 「かえるぅ~っ! お兄ちゃぁ~んッ!!」


 「由紀恵ちゃん往生際が悪いよ~」


 「由紀恵、ワタシの初めてデース! ちゃんとリードしなければいけないデース!」


 「なんの初めてよっ! 帰る! 私にはお兄ちゃんというモノがあるのよ!!」



 「うわぁ~、長澤さん、それ台詞だけ聞いていると凄い生々しいんだけど‥‥‥」


 「ゆ、百合の花咲いちゃってる////」


 「いや、ここはあのかっこいいお兄さんに長澤さんがされちゃっているビジュアルで!」



 「「「きゃぁー♡」」」



 おいこらオマエラ、何私とお兄ちゃんで変な事妄想しているのよっ!!!?

 私とお兄ちゃんはそんなのじゃなくてもっとプラトニックで‥‥‥



 「でも友也おっぱい星人デース、大きいのが好きデース!」



 おいこらリンダ!

 なに人のお兄ちゃんの性癖暴露しているのよ!!



 「え? 長澤さんのお兄さんおっぱい星人なの!?」


 「うわぁ~、じゃあ禁断の愛は無理ね?」


 「長澤さん可哀そう‥‥‥ だから相手にされていないのね?」



 「ちょっとマテ、あんたら屋上に行きたいの!?」


 

 こいつらっ!

 思わず私はこぶしを握り締めてしまう。




 「まぁまぁ、由紀恵ちゃんはちゃんと友ちゃんに愛されているから大丈夫だよぉ~」

 

 「え? ええ? そ、そう思う紫乃?」


 「そりゃあラブラブだよぉ~。登録終わったからさあ行こうか~」


 「えへっ、えへへへへへ」


 私は思わずニマニマしながら紫乃に付いて行く。



 「ちょろいわね‥‥‥」


 「うん、ちょろい」


 「長澤さん、意外にちょろい」



 何か後ろでみんなが言っている様だった。



 * * *



 「OH-! これがカラオケですかデース!!」


 なんかリンダがやたらと感動している。

 特に変わったことは無い普通のカラオケボックス。


 私だってカラオケボックスくらい来た事ある。

 お兄ちゃんと一緒に。



 「そう言えば由紀恵ちゃんとくるのも初めてだよねぇ~」


 「OH-! 由紀恵は紫乃とも初めてデース! これは今晩眠れないデース!!」



 「「「そう言う関係なの!?」」」



 「私は由紀恵ちゃんのこと好きだからお嫁さんになっても良いよぉ~」


 「紫乃、お願いだからここでボケないで! それにみんな、今までの会話聞いていてなぜそこだけに過剰反応するのよ!?」



 何なんだこの娘たちは!?

 常に頭の中がピンク色なのか!?

 女子高生って常に発情でもしているのか!?


 「きゃーぁっ!」とか黄色い声をあげているみんなを私はジト目で見る。



 だめだ、こんな連中絶対にお兄ちゃんに近づけちゃいけない。




 「おお、ここだここだ!」


 「友也、持つべきはやはり親友! みんな、僕が来たよ~!」


 「あら、下級生の女の子たちがこんなにいっぱい?」


 「やっぱり先輩たちだけでは危なかったですね」


 「‥‥‥長澤君と二人だけならよかったのに」



 お兄ちゃんを近づけられないと私が思っていたらお兄ちゃんが来たぁ!?



 「友ちゃ~ん、着くの早かったねぇ~」


 「紫乃ちゃん、学割券持っているんだって? いやぁ、カラオケなんて久しぶりだもんね」



 何と紫乃が呼んだの!?



 「ねぇねぇ長澤さん、お兄さん紹介してよ!」


 「あ、ずっる~ぃい! 私も!」


 「近くで見るとかっこいいよねぇ、長澤さんのお兄さん!」


 「友也よく来たデース! さあ私とデュエットするデース!」



 おいこらオマエラ何いきなりお兄ちゃんを誘ってるのよ!

 お兄ちゃんは私と一緒に歌うのよ!!



 「お兄ちゃんは私と歌うの!」



 お兄ちゃんの腕を取ってそう言う私。

 すると高橋静恵たちも負けていない。



 「あら~、由紀恵ちゃんここはみんなで楽しく行かない?」


 「そうですよ、せっかくのカラオケなのですから!」


 「‥‥‥長澤君とデュエット」


 「と言う事で最初はこれかな~、ぽちっとな~!」


 「おー、紫乃、それお仕置きだべぇ~デース!」



 流れ出すそれは小さいころアニメで見た事のあるやつの歌だった。

 マイクを持つ人もそうでない人もみんな知っている歌。

 

 そしてリンダまで!?




 こうして水面下でお兄ちゃんとのデュエットをかけて熾烈な歌合戦が始まるのだった!  

   

  

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