リベンジ

(おいおい、これで何発目だよ?)


(軽く、100はいってると思うぞ……?)


 周りからそんな声が聞こえてくる。


 それもそうだ。

 こんな漫画の中から飛び出してきたようなガンマンが目の前にいるんだから。


「ああ、ダメ、そろそろ集中力切れてきた。腕ももう上がんないし……」


 そう言って美香は銃をその場に置いてしまった。


 記録は114。

 開業からここまで当てたゲストは初めてらしい。

 そもそも前回の記録ですら、前代未聞だったのにそれを大幅に超える記録である。


「語彙力が無くて申し訳ないけど、すごいの一言しかないわ」


「ふふ、まぁ本気出せばこんなもんかな」


 可愛らしく微笑みながら、美香は得意げに肩を回した。

 どっかの世界にいる射撃が得意な小学5年生の男の子と対決したら、どっちが勝つんだろうな。

 ついつい、そんなことを思ってしまう。


「お客様、宜しければこちらをどうぞ」


 そんなことを考えているおれの前にいつのまにかスーツを着た女性が美香の前に立っていて、何かを差し出してきた。


「え、あ、はい……」


 美香は少し驚いた様子で差し出されたそれを受け取る。


「なんだ、これ……?」


 受け取ったそれは手のひらサイズの紙切れだった。

 真ん中に誰かのサインのようなものが書いてある。


「お帰りのなる前にゲート付近にある赤い建物にお立ち寄り下さい。そこで引き換えになります」


 優しく微笑みながら、スーツの女性はそう言った。


「は、はい……」


 少し戸惑いながら、美香はそれを財布の中に閉まった。


「なんなんだろうな、さっきの」


「さぁ……まぁ言い方的になんかくれるみたいだよね」


「非売品のグッズとかかな?」


「本物の銃だったりするかもよ」


「いやいや、それはないだろ」


 美香の言葉におれは軽く笑いながら、そう言った。


「ふふふ、んー、それより集中したからお腹減ってきたかも。なんか甘いもの食べたいなぁ」


 美香は大きく背を伸ばした後、お腹を抑えてアピールしてきた。


「よし。じゃあ近くにケーキが食べれるレストランがあるみたいだから、そこに行くか」


「さんせーい!!」


 おれの言葉に上機嫌になった美香はおれの手を取り、ぎゅっと握ってきた。


「なんのケーキがあるのかなぁ」


 早速パーク専用のアプリを開き、メニュー表をチェックし始める美香。


 おれはその様子を見て、今自分がとてつもなく幸せなことを噛み締めつつ、美香と繋いだ手にぎゅっと力を込めるのだった。

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