クリスマス
いよいよこの日が来た。
12月25日。クリスマス当日。
しかし、何も特別なことをするつもりはない。
もちろん、どこに行くかと二人で悩んだりはしたが、前と違って、おれ達の関係は大きく前進している。
だからこそ、二人で楽しめるプランを練ってきたわけだ。
「ついこの間もここに来たのに、なんだか贅沢だよね」
「そうだな」
入場ゲートでチケットを通し、中に入ると、美香がそう言ったので、おれは相槌を打った。そして、いつものように手を繋ぐ。
美香はタイツにミニスカ、セーターにコートという中々の破壊力でやってきた。
対するおれは、果たして隣に並ぶのにふさわしいのかと思うほど普通の格好である。
ジーパンにロンT、セーター、そしてそれを隠すように柄にもなく、コートを着てみたが……周りにはどう映っているのだろうか。
そんな心境とは裏腹にクリスマスということもあり、中は朝早くから大勢の人で賑わっていた。
「さて、まず何から乗る?」
「んー、とりあえず一周ぐるっとまわりたいんだけど、いいかな?」
「別に構わないけど……いいのか、それで?」
今なら人気アトラクションのチケットもまだ発券できると時間帯だけど……
「海斗とゆっくりとこの景色を楽しみたいんだよね……その……恋人同士として……」
恥ずかしいのか、少し顔を赤くさせ、繋いでいる手に力を込める。
その仕草だけで、おれは昇天しそうだった。
破壊力は抜群過ぎた。
「二人だけでゆっくり楽しもうか……」
言って、おれも繋いでいる手に力を込めた。
「うん……!」
満面の笑みの美香。
やっぱり、おれの彼女はめちゃくちゃかわいい。
そうして、おれ達はまずは一周することにした。
途中、クリスマス限定の飲み物が販売されていたので、お互い好みの味を選んで購入した。
「ん、これ美味しい」
近くにあったベンチに座り、美香がカップに入ったそれを飲むと、そう言った。
美香が選んだのはホワイトチョコレート味のドリンクだった。
「よかったな」
「うん。よかったら一口飲む?」
「え、いいのか?じゃあお言葉に甘えて……」
おれはカップを受け取って、それを一口飲む。
「あ、間接キスだね」
不意に美香がそんなことを言うもんだから、おれは口に含んだドリンクを勢いよく飲み込んでしまった。
「ゲホッ、エホッ……!」
「だ、大丈夫……?!」
「へ、変なこと言うなよ……」
「へへ、ごめんね。ちょっとからかっちゃった」
ごめんねと言わんばかりに美香は舌をぺろっと出して、謝ってきた。
美香がこんなこと言ってからかってくるなんて、普段じゃ考えられないよな……
呼吸を整えながら、おれだけに見せてくれるその表情を見て、どこか優越感に浸るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます