助っ人

 昼休みになり、いつものように美香と食堂へ行く。


「なるほどねぇ、私の動画が……」


「ああ、コメントも沢山きてて、ライバル視するようなコメントもあったぞ」


「そうなんだ……」


「それよりさ、このご飯はなんなんだ……?」


 おれは目の前に広がる光景について、尋ねた。

 テーブルの上にはお重が何個も広がっており、中には豪華なおかずが所狭しと沢山入っていた。

 おかげで周りからも一歩引かれて、見られている。

 そりゃそうだよな……

 こんなの見たら、何事だよってなるもんな。


「あは、これね……」


 美香は少し照れたような笑みを浮かべた。


「実はさ、お母さんが作ってくれたんだ……」


「お母さん……」


 美香の口から初めてかな……

 お母さんなんてキーワードが出たのは。


「朝起きたら、これがテーブルの上に置いてあってさ。海斗と私に食べてほしいんだって言ってさ」


「そう……なんだ……」


 なんでこんな豪華な食事を用意してくれたのだろうか。


「久々だったよ。あんな嬉しそうにご飯作ってるお母さん」


「いいことじゃないか」


 おれとしても家族が不仲なのは、困るし、喜ばしいことだと思う。


「うん……それでさ、お母さんが今日晩ご飯も食べに来ないかって言ってて」


「え……晩ご飯……?」


 おれは、思わず聞き返してしまった。

 まさかのお呼ばれパターンとは、予想外だったな……


「どうする?うち、くる……?」


 上目遣いでそんなことを聞いてくる美香。

 その破壊力はとてつもなかった。

 これを断ることなんて、できるわけがなかった。

 何より、大好きな彼女のお誘いを受けるのは当然だった。


「いくよ。それに挨拶もしたかったところだし」


「挨拶って……結婚するみたいじゃん……」


 美香は照れながら、そんなことを言った瞬間、何故か周りがざわついた。


(結婚だと……リア充め……滅してやる)


(ここでプロポーズしちゃうのかな……!?)


 なんて、声が聞こえてくる。


 さすがにここでプロポーズはないだろ……

 というか、まだ未成年の学生なんだ。

 そういうのはもっと、色々と整ってからだろ。


「ま、まぁとにかく、美香の家に行くよ。楽しみだな」


「うん、よかった。それじゃあ、まずはこのご飯なんとかしないとね……」


「だな……」


 果たして、何人前なんだと言わんばかりの量だからな。


「というわけで、助っ人にきたよ」


 すると、そんな声が聞こえてきたのでおれは横に目をやると、そこには香澄がいた。


「わぁ、すごい美味しそうだね。僕も食べていい?」


「ええ、もちろん。みんなで頑張って食べよ」


 そうして、三人で昼にしたらかなりガッツリとしたご飯を食べていくのだった。

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