母
授業も終わり、美香と共に学校を出る。
そして、約束通り、美香の家へとやってくる。
マンションに住んでいるのは分かってたけど、ここまで来るのは初めてだな……
美香はカギを使い、オートロックを開けた。
そのまま、エレベーターに乗り、八階で降り、つかつかと歩いていき、807と表記されたドアの前で立ち止まる。
ここが美香の住む家か……
おれはごくっと喉を鳴らす。
「ただいまー」
美香は玄関のドアを開けると、中に入り、そう言った。
「お邪魔します……」
それに続いて、おれも中に入る。
「おかえりなさい」
リビングの方からスリッパを履いて、パタパタとやってきたのは、おそらく美香のお母さんであろう。
おっとりとした性格に、おそらく四十はオーバーしているはずなのに、それを全く感じさせない美貌とスタイルの持ち主。
これが俗に言う美魔女ってやつなのかもしれない。美香のスタイルは確実にお母さん譲りなのだというのがよく分かる。
「あ、初めまして……」
おれは緊張のあまり、ぎこちないまま、頭を下げた。
「あなたがそうね?美香の言ってた、彼氏の……?」
「あ、はい。そうです……工藤 海斗といいます……」
恥ずかしくなり、おれはつい目線を逸らしてしまう。
「来てくれてありがとうね。ご飯の準備するから、少し待っててくれる?」
「あ、はい……」
そんなやりとりをした後、おれ達は揃ってひとまず、リビングへと向かうのだった。
「私の部屋に行く……?」
おれが緊張しているのを察してか、美香はそう言ってくれた。
「あ、ああ……そうだな……」
リビングにいても、緊張するだけだし……
「あんまり激しいのはダメよ?お母さんいるんだから」
しかし、おれ達がリビングから出ようとするとお母さんのそんな一言が飛んでくる。
「ばっ……!何言ってんの!?」
美香は顔を赤らめながら、お母さんの背中をバシッと叩いてから、こちらにきた。
「お母さんったら、ホント、何言ってんだろね……」
「そ、そうだな……」
お母さんの爆弾発言のせいで、おれ達はやけに意識してしまう。
ただ、部屋に行くだけなのに、どうしてこうなった……
しかし、意識しすぎて、そのまま、結局リビングにいることになるのだった。
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