やっぱり、デート

 出かけられる格好に着替えてから、二人揃って家を出る。


「それじゃ、行くか。ショッピングモールの中にいつも使うスーパーがあって、上の階にファミレスもあるから、そこにしよう」


「はーい」


 香澄は元気よく返事をした。

 うん、やっぱりこいつといるとデートって感覚になってしまう。

 まぁ、おれがデートしたいのは美香だけど……


「ん?」


 その時、ポケットに入れている携帯が震えた。

 取り出して、画面を見てみると美香からのメッセージだった。


「夜ご飯、そっちで食べてもいいかな……?」


 おれはメッセージを見て、速攻でもちろんと打ち、返信をした。


 美香が夜に来るなら、ステーキでも買うかな。


「もう結婚しろよ……」


 すると、少し先を歩いていた香澄が何かをポツリと呟いた。


「え、何が言ったか?」


 考え事をしていたので、うまく聞き取れなかった。


「ううん、なんでも。さ、早く行こ」


「あ、ああ……」


 前も似たようなことあったよな……

 その時も聞き取れなくて。

 うーん、なんて言ったんだろ……








 ♦︎









 そして、歩くこと十五分ほどでショッピングモールに辿り着く。

 そのまま、エスカレーターに乗り、二階へ向かう。


「混んでなきゃいいけど」


 昼の二時を少し過ぎたところだが、日曜日なので混んでいる可能性もある。

 まぁそうなったら、フードコートで食べるしかないんだけど……


 そんなことを考えながら、比較的リーズナブルな全国チェーンのファミレスの前にたどり着く。

 幸いにも、中はまだ空席があった。


 そうして店に入り、席へと案内されてすぐにおれは目についたメニューを頼みまくった。

 そして程なくして頼んだメニューが順番に運ばれてきたので、おれは夢中で食べまくっていく。


「すごい勢いだね」


 パフェを摘みながら、香澄は驚いたような声を上げた。

「まぁな」


 普段ならこんなに食べないが、今日は朝から何も食べてなかったからな。

 しかし、さすがにサラダにハンバーグ、ピザ、デザートにショートケーキってのは頼みすぎたな。まだピザが半分あるのに、すでに腹が結構苦しい……


「この後、動くんだから程々にしておいてね?」


「あ……うん、そうだよな……」


 そうだよ、買い物するんじゃん。

 こんな腹一杯の状態で買い物したところで、あれ作ろうみたいにならないよな……

 今日の夜、美香が来るというのに……


「はぁ……そのピザちょうだい?甘いものばっかりだとなんか塩気があるのが、ほしくて」


 そう言って、香澄はおれが取ろうとしていたピザの一切れを掴んだ。


「香澄……」


 こいつ……なんて気が効くやつなんだ……

 いや、おれが後先考えずに頼んだからか……

 しかし、何にせよ、ありがたい。


「その代わり、そっちが頼んだショートケーキ、ちょうだいね」


「あ、ああ、もちろん……」


 本当はケーキを食べるのも辛いからだろうって思って、そう言ってくれたんだよな……

 こんなに気が使える男子っているのだろうか。

 やっぱり、こいつは女の子なんじゃないかと思えてしまう。

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