また

「もう終わりだね……」


「だな……」


 夜の八時過ぎ。おれ達は橋の上にあるベンチに座っていた。もちろん、手を繋いで。

 晩ご飯も終え、最後に乗ると決めていたアトラクションも乗り終え、後は帰るだけだ。

 楽しい時間はあっという間に過ぎる。

 もっと続けばいいのにと、どうしても思ってしまう。


「今日は楽しかったねー……」


「ああ、本当に。帰りたくないよ」


「じゃあ、泊っちゃおっか……」


 美香のその発言におれはたまらず、どきっとしてしまった。

 確かにこの近くには沢山ホテルがあるから、泊まることだってできる……

 しかし、まだ未成年のおれ達がホテルに一緒に泊まるなんて……

 しかも、付き合って初日に……

 それは色々とまずい気がする。


「なんてね……でも泊まりたいくらい楽しい場所だよね……」


 そう言って、美香はゆっくりと空を見上げた。

 その時だった。

「わぁ……」


「おお……」


 夜空に花火が打ち上がったのだ。

 そっか。確かこの時間になると花火を打ち上げるんだっけ……


「綺麗……」


 隣に座っている美香が小さく呟く。

 子供のように目を輝かせながら、打ち上がっていく花火に目を合わせていく。

 その横顔の方が花火なんかより何十倍も綺麗だとおれは思った。


「さ、帰ったらクリスマスの時のスケジュール決めようね」


「か、帰ったら?さすがに早すぎないか……?」


「もー……なんで、気持ちがわかんないかな……」


 言って、おれの手をより強く握りしめてくる。


「一緒にいたいからに決まってるじゃん……」


 ポツリとそう呟く。

 今日、おれは何度、美香に胸を射抜かれたのだろうか。

 そして、まだまだ女の子の、いや、美香の心がわかってないんだなと実感してしまう。

 もっと美香の心がわかるようになりたい。

 恋人として。


「でも、今はこの瞬間を大切にしたいかな……」


「そうだな……」


 そうして、おれ達はゆっくりと花火を眺めながら、この幸せなひと時を噛み締めるのだった。














 ♦︎












「すーすー……」


 おれの背中で穏やかな寝息を立てる美香。

 すっかり疲れてしまったようだ。


 電車に乗ってから、美香はすぐに寝てしまい、電車を降りても寝てしまっていた。

 なので、駅の近くに止まっていたタクシーに乗り込み、家の前まで送ってもらったのだ。

 かくいうおれもかなり眠い。

 パークを出た途端に眠気がどっと襲ってきた。それくらい楽しかったってことだよな。

 それに昨日、全く寝れていなかったから疲労感が半端ない。


 玄関を開け、靴を脱いで、リビングに入り、美香の上着を脱がせ、ソファの上にそっと置く。

 そして、毛布をかけ、おれは洗面所へと向かう。


 シャワーだけ浴びて、今日はおれも寝るとしよう……

 そして、サッとシャワーを浴び、リビングに毛布と枕を持ってきて、おれと寝ることにした。


 自分の部屋のベッドで寝ても良いのだが、なるべく美香のそばにいたいし、起きた時にびっくりさせないようにしようと思ったのだ。


「おやすみ……」


 おれはテーブルの上にいる熊の海斗と美香にそう言いつつ、ソファで眠る美香に視線を向けた後、毛布を被り眠るのだった。


 そして、おれが夢の世界に落ちるまでそう長い時間はかからなかった。

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