射撃

 お土産屋さんで熊のぬいぐるみ(海斗と美香)を買った後、別なお土産屋さんにも行き、他のお土産も物資する。

 そして、あらかた物色した後、お土産の袋をコインロッカーに入れ、次のアトラクションへと向かう。


「お、ここだ」


 そして、少し歩いた後、到着する。

 薄暗い中を進み、あらかじめ発券していたファストパスをスタッフの人に出し、そのまま乗り場へと向かう。


 おれ達がやってきたのは、フリーフォール型のアトラクション。

 大昔に作られたとされる神秘のメダルが見つかった遺跡にツアー客として訪れるというのが設定。

 不思議な力を持つと言われるメダルが突如として発光し、遺跡が崩壊しそうになる。

 コンダクターの案内でエレベーターで脱出しようとするが、何故かエレベーターが上昇するのではなく、急下降してしまう……というストーリー。


 十年くらい前に親父と一緒に乗ったっけ……

 親父は楽しい楽しいって言いながら、乗ってたけどおれは少し怖かったイメージがある。

 十年振りに乗ってみると、感じ方がかわってたりするのだろうか。


「美香は大丈夫なのか、そのこういう絶叫系」


「もっちろん。あ、まさか海斗怖いの?」


 からかうように美香は笑みを浮かべる。


「そ、そうじゃないけど、確認しただけだよ……」


 素直に怖いかもと言えばいいものの、おれは何故か虚勢を張ってしまう。

 ま、まぁ大丈夫だろう……

 そこまで怖いことはないはず……


 おれは少し不安になりつつ、アトラクションへ乗り込むのだった。













 ♦︎













「うおおおおお……」


 全然大丈夫じゃなかった。

 おれではなく、美香が。

 ベンチに座り、聞いたことないような声で嘆いている。


「だ、大丈夫か……?」


 急いで買ってきたペットボトルの水を差し出す。


「う、うん……ああ、舐めてた……めっちゃ怖いじゃん……」


「絶叫ダメなら言ってくれればよかったのに……」


 ちなみにおれはなんとか大丈夫だった。

 成長すれば、克服できるものもあるんだなと実感した。


「海斗とさ、色んなアトラクション乗りたかったの……思い出いっぱい作りたいからさ……」


「美香……」


 美香のその言葉におれは嬉しい気持ちがこみ上げてきた。

 そんなこと思ってくれてたんだな……


「ありがとう。でも、おれは一緒に楽しく乗れるアトラクションに乗りたいから、次からはやめような……?」


「うん……」


 言いながら、おれも隣に座る。


「ん、なんだろ、あれ」


 すると、遠巻きに何かを見ていた美香が口を開いた。


「え、なんだろうな……」


「ちょっと行ってみようよ」


「え、もう大丈夫なのか?」


「うん、ほら、いこ!!」


 素早くベンチから立ち上がると、おれの手を引き、美香は駆け出していった。

 さっきまで、グロッキー状態だったのにこの変わりようには、正直びっくりするしかなかった。


「射撃か……」


 そして、おれ達がやってきた場所は射撃ができるワゴンのお店だった。

 前、と言っても十年前だが、その時にはこんなお店なかったから、その後にできたのかな。


 一回二百円で遊べ、弾は十発、的に全て当たれば金のバッジ、九発当たれば銀のバッジ、八発当たれば銅のバッジがもらえるようだ。


 的は固定されているのもあれば、動くものもある。

 全てを当てるのはかなりの技術が要りそうだ。


「あれやろうよ!」


 すっかり元通りの元気な様子で美香は言った。


「いいけど、身体は大丈夫なのか……?」


「大丈夫だって!ほらほら!」


 美香は急かすようにおれの腕を引っ張り、受付の場所に向かった。

 そして、お金を払い、銃を受け取る。


「さ、いっちょやりますか……」


 まるで麻雀をやるオッサンみたいなセリフを吐きながら、美香は銃を構え、的を狙う。

 構えはかなり様になっているけど、大丈夫かな……

 さっきまで、おえおえ言ってたからな……













 ♦︎












(すごくね……?)


(前世はきっと西部のガンマンだったんだな……)


 そんな声があちこちから聞こえてくる。


 おれ達の周りにはいつしか大勢のギャラリーが集まっていた。

 それもそのはず。

 もう五十発連続で的を射抜いている。

 店員さんもどこまで記録を伸ばせるのかと固唾を飲んで見守っている。


「あ、しまった……」


 手元が狂ったのか、そう叫んだ後、弾は的の横を通り過ぎていった。


 記録は五十ニだった。

 つまり五十ニ発連続で当たったということだ。

 周りからは惜しみない拍手が贈られてくる。

 そして、金のバッジを五個受け取り、おれ達はその場を去って行った。


「あー、面白かった」


 バッジを胸元に付けつつ、美香はほくそ笑んだ。


「いや、すごすぎてびっくりしたわ」


 最初の心配は確実に杞憂だった。

 次から次へと的に当てていく様は、流石の一言しかなかった。


「最後、集中が途切れちゃったんだよね。だから、クリスマスの日にリベンジかな」


「楽しみにしておくよ」


 次は是非とも百発くらい当ててほしい。


「それにしても海斗、すごい下手だったね。一発も当たってなかったよ?」


「ぐっ……おれはこういうのは向いてないんだよ……」


「次は一発くらい当たるといいね」


 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、美香はそう言った。

 くっ……美香がめちゃくちゃ上手いから、反論できないのが悔しい……

 ゲーセンで特訓でもしようかな……

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