サービス

「うん、うまい」


「おいしいね」


 メインのパスタが運ばれてきて、おれ達はフォークに絡め、それぞれ口に運んだ。

 うん、ソースがおいしい。

 それに量も程よい感じで、この後動くとしても身体が重くなることは無さそうだ。


「それでさ、このレストランで告白するつもりだったの?」


「ぶっ……!」


 しかし、美香がいきなりそんなことを言ってくるので、おれは口に含んだばかりのパスタを少し口から吐き出してしまった。


「い、いきなりなんだよ……」


 おれは慌ててタオルで口元を覆い、隠した。

 不意打ちすぎて、やばかった……


「いや、海斗のことだからこういうところで何か用意して、告白しながら、渡してくれるのかと思って」


 パスタをするすると口に運びながら、美香はそう言った。


 なんかわからないけど、めちゃくちゃバレてるな……

 なんでだよ……

 そんなにわかりやすいのかな、おれって……


「ま、まぁそれもアリかと思ったけどな……でも、周りに人もいるし、難しいかなと思って……」


「まぁそりゃそっか。確かに恥ずかしいもんね」


「そういうこと……」


 おれは少し荒くなっていた呼吸を整えるためにカップに入ったコーヒーを一口飲んだ。


「それより、早く食べようぜ、冷めちゃうから」


「うん。あ、食べながらでいいから、他の告白パターンを教えてね」


「いや、それは……恥ずいから勘弁してくれ……」


「えー、いいじゃん?気になるしさ。あ、ダメだしはなるべくしないようにするから」


「ダメだしって……」


 ファッションチェックかよ……


「あの、すいません、お客様……」


 と、そんな会話をしている時、店員さんの一人がおれ達の元にやってきた。


「あ、はい……?」


 もしかして、少し騒ぎすぎててうるさいって周りから言われて、注意に来たのかな……


「こちら、サービスでございます」


 しかし、おれの予想とは裏腹に何故か小さな生クリームで出来たホールケーキをテーブルの上に置かれた。


「え、あの……?」


おれは困惑しながら、店員さんに目を向ける。


「ごゆっくりお楽しみ下さい。それとお幸せに……」


 穏やかな笑みを浮かべながら、店員さんはそう言って、去っていった。


「なんかもらっちゃったね」


「だな……」


 それにお幸せにって、会話聞かれてたのか……

 めちゃくちゃ恥ずかしいな……

 しかも、まさかケーキのサービスをなんて……


「じゃあ、まぁこのケーキに免じて、告白パターンの報告はまた今度にしよう」


「また今度って……」


 いずれ聞くつもりかよ……

 まぁ他に誰もいなければいいか……

 いや、良くないか……

 めちゃくちゃ恥ずかしいわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る