破局

 その日の夜。

 おれは家に着いた途端、カバンを適当な場所に放り投げ、すぐさまソファに座り、パソコンを足の上に広げる。


 この後、美香は来ない。なんでもかなり久々に家族でご飯を食べるそうだ。

 ぶつくさと色々と言っていたが、その表情はまんざらでもなさそうだった。

 この調子で家族の仲も回復してほしいなと思った。

 そしていやはや、なんともいいタイミングだった。

 理由は一つ。美香にどうやって告白するかを調べるためだ。

 ここ最近、美香と常に一緒だったので調べる暇がなかったが、ようやくチャンスがきた。

 明日はいよいよパークに行く日。

 このチャンスを活かす手はない。

 場所は決まった。後はシチュエーションだ。

 レストランで言うべきか、それともペアのモノを買って言うべきか……


 確か、当日の昼ご飯と夜ご飯を食べるために、それぞれレストランを予約したっけ……


 おれは、カタカタと打ち込み、パソコンでレストランの画像を探す。


 うーん、見た感じ、二つの店もあんまり広くないから他の人に聞かれるのも嫌だよな……

 となると、ペアのモノか……

 ホームページを見ると、クリスマス限定のペアのキーチェーンをカスタムして手作りできるそうだ。

 うん、これはありかもな……

 いや、一緒に作った以上、そういう関係になりたいって言ってるようなものなのか……


 うーん、どうすればいいか分かんないな……

 おれはつい、頭を悩ませてしまう。


 しかしその時、閃く。

 今の情報化社会なら、そういう経験をした人がきっといるだろう。

 そして、その経験をどこかに載せてたりするはずだ。


 おれは検索エンジンでキーワードを打ち込み、探す。

 だが、その中に気になるサイトが載ってあった。


「パーク内で告白すると、長く続かない……?」


 それはある意味、都市伝説として噂されているものだった。

 それまで仲の良かった二人が告白して、付き合ったものの、わずか一ヶ月で破局したとか、はたまたプロポーズをした二人が半年で破局したとか、色々書かれていた。


 まじ……かよ、これ……?


 ネットの記事なので、面白おかしく書いているものもあるだろう。しかし、今のおれには大ダメージを喰らわせることになった。


 嘘だ、嘘だとページをクリックすればするほど、嫌な情報が次々飛び込んでくる。


 もちろん、そんなのは迷信だと書き込んである記事もあったが、何故人間はこうもネガティブな意見の方が気になるのだろうか。

 おれの頭の中はネガティブな意見で埋め尽くされていた。


 ダメだダメだと思いつつも手がどんどんと色んな記事を開いてしまう。

 くそ、この世に神なんていないのか……

 おれは心の中で嘆きつつ、何かに取り憑かれたようにマウスをクリックしまくっていくのだった。

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