同棲

 洗面所での騒動のあと、ヒリヒリと痛むアゴを擦りながら、おれは自室で着替えを済ませ、リビングへと向かった。


 リビングにはもちろん、テーブルイスに座った美香がいた。焼きたての食パンを頬張りながら、むすっとした顔でテレビのニュースを見ている。

 うーん、これは間違いなく怒っているな……

 まぁ裸を見られた以上、それは当たり前の反応だよな……

 しかし、二人分の目玉焼きにベーコン、サラダと朝ごはんを作ってくれてはいるから、怒り心頭ってわけではないのかな……


 おれも食パンをトースターにセットし、食器棚にあったマグカップに冷蔵庫から取り出した牛乳を注ぐ。

 そして、ものの数分で食パンが焼き上がり、テーブルの上に置いてあったマーガリンとイチゴジャムを塗ろうと手を伸ばす。

 その時だった。


「なんか言うことない……?」


「あ、その……本当ごめん……」


 テレビに目をやったまま、美香がそう言ってきたので、おれは反射的に頭を下げて謝った。


「まぁ私も油断してたから、あんまりキツく言えないんだけどさ……」


「……」


「次やったら、もっとぶっ飛ばすからね……?」


 頬を少し膨らませ、こちらに目をやる美香。

 物騒なこと言ってる割に表情はめちゃくちゃかわいくて、思わず、にやけてしまいそうになる。


 「あ、ああ、おれも美香が家にいる時は気をつけるようにする」

 

「ん、そうして下さい……」


 ああ、なんとか仲直りできてよかった。

 このまま、告白なんて絶対できないからな。

 しかし、美香……スタイルやばかったな……


 たまらず、思い出してしまい、おれは顔が赤くなっていくのがわかった。

 だって、思春期の男の子だもん。

 それに好きな子の裸なんて……やばすぎるでしょ。


 頭の中でゲスなことを思いつつ、おれは美香の作ってくれた朝ごはんを食すのだった。

 というか、朝ごはん、普通に作ってくれるようになったよな……

 まじで同棲してるんじゃないかって、錯覚してしまいそうになる。

 だって、朝も昼も夜も一緒なんて……

 告白したら、そのまま同棲しようって言おうかな……

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