ゆでダコ

「あ、これとか良くない?!あ、でもこっちのやつも捨てがたい……」


「あのさ、美香……」


「うん?」


「帰らないの……?」


 時刻は既に夜の九時を過ぎていた。

 結局、週末にテーマパークに行くことになったので、どこに行くかホームページを見ながら、決めているのだが、美香のテンションがアゲアゲになっていて、帰る気配がない。

 いや、まぁ楽しいのはわかるんだけどね……


「えーだってさ、一緒に見てるの楽しいんだもん……」


 拗ねたように言う美香。

 やけに子供っぽくてかわいい。

 しかも、一緒にってところにキュンとしてしまう。


「でも帰らないと……明日も学校だし、それに制服もさ、変えないとだろ?」


「一日くらい同じの着てたって大丈夫だもん」


「……」


 うーん、このセリフから察するにっていうか、確実に美香は泊まろうとしている。

 いや、それはめちゃくちゃ嬉しいんだけど、やっぱりここは心を鬼にして……


「だめ……?」


 目を潤ませ、まるで子犬のような目でこちらを見てくる。


「し、仕方ないな……」


 もちろん、断ることもできず、おれは二つ返事で頷いてしまう。だって、かわいいんだもん!仕方ないでしょ!


「やったー!あ、前と同じで一緒に寝る?」


「ね、寝ないわ!それに前は雷が鳴ってたから寝ただけで今日は大丈夫だろ……」


「ちぇー……まぁいっか」


 言いながら、再びパソコンに目を落とす美香。

 なんで、悔しそうにするんだよ……

 つい、いいよって言ってしまいそうになるだろ……

 しかし、予想外の出来事になってしまったな……

 まぁ別に何かするわけでもないから、大丈夫だよな……


「それより海斗はさ、どこか行きたいとこある?」


 すると、美香がそんなことを尋ねてきた。


「え、いや、おれは別に……一緒に居れればそれで……」


「え……」


「あ、いや……その……!」


 やばい、ボーッとしてたから、つい本音を……!

 ああ、美香の顔がゆでダコみたいに真っ赤になっていく……!


「えと、あの、その……」


 今にも音を立てて爆発しそうになっている。

 なんか無駄にパソコンのエンターキーを連打しているじゃないか……


「あ、あのそのつまりだな……そう!一緒に回れればそれだけで楽しいってこと!」


「ええええ、ああ……」


 ってそれじゃフォローになってねぇ!

 むしろ、一緒に居たいってことを念押しで言ってるだけじゃないか!


「か、か、海斗……浮かれすぎだよ、はははは……」


 訳の分からないら笑みを浮かべた後、美香はゆっくりと立ち上がり、玄関から外に出て行った。


「……」


 この空気に耐えられずに出て行ったか……

 まぁしばらくしたら帰って来ると思うが……

 しかし、無意識ってやつは怖いな……

 それにしても告白は……どうするか……

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