今週とクリスマス
夜。美香といつものように向かいあって晩御飯を食べる。
今日は少し冷えるので、鍋にしてみた。
白菜が安くて、ついつい多めに買ってしまった。でも、白菜って鍋によく合うよね。
「あー、もうぽっかぽか」
食べ終えた箸をテーブルに置き、美香が口を開いた。
「やっぱ、冬は鍋だよな」
「うん。大満足」
美香が満足そうな表情を浮かべる。
よし、話を切り出すなら今だ。
話というのは、もちろん親父からもらったテーマパークチケットのことだ。
クリスマスに行こうって誘うんだ……
おれはドキドキと激しく鼓動するのを感じながら、ゆっくりと箸をテーブルの上に置き、口を開こうとした。
「あ、そうだ」
「んんえ!?」
「え、何……?」
「あ、いや、なんでもない……」
しかし、口を開こうとした瞬間に美香が先に喋ったので、つい変な声が出てしまった。
おかげで美香が奇異な目でこちらを見てきている。
「変なの……まぁいいや。あのさ、ここ行かない?」
言って、美香は何かをテーブルの上に置いた。
見たことのあるデザイン……
というか、これは確実に……
「テーマパークのチケット……」
「そう、お父さんがさ、なんかくれて。しかも日付がクリスマスの日でさ……」
照れた様子で美香は言った。
お父さん……
クリスマスの日付のチケットって……
有難いけどっていうか、父親って考えること似るのかな?
いや、うちのは母さんの入れ知恵かもだけど。
「あ、あのさ、実はおれもさ……」
少し戸惑いつつ、おれもチケットを出した。
それを見て、美香は驚いたような表情を見せた。
「え、なんで?」
「実はさ、うちの親父が送ってきてくれたんだよ。まさか、カブるとは思わなかったけど」
言って、おれは苦笑を浮かべる。
「そうだったんだ……ふふ、確かにね」
それを聞いて、美香もおかしそうに笑みを浮かべた。
「でもこっちは日付指定がないんだ。だから、いつでも……」
「え、それじゃあ今週行けるの!?」
こちらをバッと向き、興奮気味にそう言ってくる美香。
「え、まぁそうだけど……」
「じゃあ今週行こうよ!あー楽しみだなぁ!」
「こ、今週……?」
クリスマスにも行くのに、今週も行くのか……?
なんとなく、勿体無い気がする……
「あ、もしかしてなんか予定ある感じ?」
「いや、ないけど……」
「じゃあ行こうよ!でさ、予定も立てようよ!」
「え、ああ、そうだな……」
ま、まさか今週行くことになるとは……
しかし、告白は……どうする……?
クリスマスまで待つか、今週行った時に言うべきか……
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