三章

プレゼント

 早いもので十二月に入った。

 寒さも一層厳しくなり、今年ももう終わりになる時期になった。


「うーん……」


 そんなある日、おれは制服姿のまま、ソファの上に横になりながら、携帯を見ていた。

 学校から帰ってきてから、すぐにソファに座り込んだ。

 そろそろ起きて、準備をしないと晩ご飯の時間に間に合わない。

 頭ではそう思っているものの、中々身体が動かない。


 というのも、家に帰ってから、おれは携帯でデートスポットを探していた。

 もちろん、美香に告白するためだ。

 美香と毎日一緒にいて、もうおれの気持ちは完全に固まった。

 おれは美香が好きだ。

 友達としてではなく、異性として。


 しかし、ただ告白するより、どこかに出かけ、その時に告白したいと思っている。

 きちんとシチュエーションを決め、然るべきタイミングで気持ちを伝える。

 だが、告白はおろか誰かを好きになったことなんてないから、どうしたら良いか完全に迷ってしまっている。


 と、そんな時だった。


 ピンポン。と家のチャイムが鳴った。


 まさか、もう美香が来たのか?

 慌てて、モニターフォンに目をやる。

 すると、そこには何かを配達しに来た郵便局員の人が写っていた。


 なんだろう?


 疑問に思いつつ、玄関に向かい、開ける。

 そして、ハンコを押し、玄関を閉める。


 送られてきたのは郵便書留だった。

 となると、現金?

 いやいや、現金なんて送ってくる人いないし。


 おれは封筒を裏返し、差出人を確認する。

 差出人は親父だった。

 一体、何を送ってきたんだろうか……


 こんなこと今までないから少し構えつつ、おれはリビングに戻り、イスに座り、封筒を開ける。

 そこには何かのチケットが二枚と手紙が入っていた。


 チケットは有名なテーマパークのチケットだった。

 日付指定がなく、入園制限がない日ならいつでも使えるそうだ。

 そして、手紙には「少し早いが、クリスマスプレゼントだ。これを使って、美香ちゃんと楽しんでこいよ」と書かれていた。


 親父……中々良い仕事するじゃないか。

 とは思うものの、こんな気の利いたこと今までしたことがないし、母さんの入れ知恵でもありそうだな。


 何にせよ、これは大変有難い。

 しかも、日付指定がないってのも嬉しい。

 二人で遊びに行って、その流れで告白……

 よしよし……


 おれは頭の中でシチュエーションの妄想をし、たまらずにやけてしまう。

 恐らく、側から見たら大変キモいだろう。

 しかし、そんなこと構うもんか。

 おれの使命は美香に告白して気持ちを伝えることなんだ。

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