変なところ
翌日の土曜日、午前十時。
おれは駅前のベンチに座っていた。
まさか知り合って間もないやつと出かけることになるとはな。
しかも、美少女……ではないが、超絶かわいい男子と。
美香の言った通り、これはもはやデートなんじゃないか。とさえ、思えてしまう。
男同士でデートという言葉が当てはまるとは思えないが、そう感じても仕方ない。
だって、めちゃくちゃかわいいんだもん。
何、あいつ。
いやいや、待て。
おれが好きなのは美香なんだ。
まぁまだ告白できてないけど……
そもそも、香澄に対して、好きって感情はおかしいからな。いや、その同性愛がダメってわけじゃなくて、おれが好きなのはあくまで異性であって……っておれは誰に対して言い訳してんだろう。
「お待たせー」
心の中でそんなことを考えていると、聞いたことのある声が聞こえてきた。
その声を聞いて、おれは俯かせていた顔をハッと上げた。
そこには、私服姿の香澄がいた。
ジーパン……いや、デニムか……?
それにボアのジャケット。
うん、これは間違いない。
「もしかして、それレディースか?」
「う、うん。僕、あんまり背が高くないからさ、そっちの方がいいって勧められて……」
「そ、そうなのか……」
確かに違和感がないくらい、しっくりきている。普通にかわいい。
男に思う感情じゃないけどな。
おれもオシャレしてくるべきだったかな。
いや、気合入れて来たら変に思われそうだから、それはなしだな。
まぁ、今日はいつも通りのジーパンにパーカーという無難スタイルで来たわけだけど。
「それより、今日はありがとうね。付き合ってくれて」
付き合ってくれてという言葉に何故かドキッとしてしまう。
おいおい、落ち着け。別に変な意味じゃない。
「いや、どうせ暇してたし…‥ってそれより、どこに行くんだ?」
「それはね、二人で楽しめる場所だよ……」
言いながら、うっすらと微笑む香澄。
「え……」
おれはその表情を見た瞬間に思わず、身構えてしまった。
ま、まさか怪しい店とか変なところじゃないよな……?
考えてみれば、知り合って間もないやつを誘うなんて変じゃないか……?
「じゃあ行こっか」
「……」
先を歩く香澄を見ながら、おれはここに来たのは間違いなんじゃないのかと思い始めてしまっていた。
しかし、今更帰るわけにもいかない。
何より、先ほど暇だと自分から言ってしまった。
おれは重い腰を上げ、ゆっくりと香澄の後についていくのだった。
ああ、変なところに行きませんように……
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