朝ご飯

「ふぁぁ……」


 翌朝。おれはベッドの中でゆっくりと目を覚ました。

 いつのまにか眠ってたみたいだな。

 しかし、完全に寝不足だ……

 今日が休みでよかった。


 おれは頭をボサボサとかきながら、ベッドから降りる。

 そういや、一緒に寝ていたはずの美香が隣にいない。

 おれは枕の近くに置いていた携帯を手に取る。画面を点灯させると既に朝の九時を回っていた。

 もう九時過ぎか……

 ここにいないのなら、リビングにいるのかな。

 そんなことを思いながら、階段を降り、リビングへと入る。


「あ、起きたんだ。おはよう」


 リビングに入ると、台所に立ち、フライパンを動かしている美香がいた。


「おはよう……って何してるんだ……?」


「ああ、ごめんね。何か朝ご飯作った方がいいかなって思って。勝手に冷蔵庫の中のもの、使っちゃった」


「ああ、いや、別にいいんだけど……」


 まさか、美香が朝ご飯を作ってくれるなんて……

 嬉しいなんてもんじゃない。

 美少女の手作り朝ご飯だぞ。

 羨ましいだろ、同世代の男子諸君よ。

 はっはっは。

 しかし、悪いがこの幸せは独り占めするさせてもらうぞ。


「どうしたの?もうできるけど……」


 リビングの入り口で突っ立っているおれを見て、美香は首を傾げた。


「あ、ああ、ごめん。先に顔洗ってくる」


 我に帰ったおれは慌てて洗面所へと向かった。

 感動のあまり、直立不動になってしまっていた。

 冷たい水で顔をバシャバシャと洗った後、歯を磨き、おれはリビングへと戻ってきた。


「はい、できたよー」


 言いながら、料理の乗ったプレートをテーブルの上に置いていく。

 プレートにはスクランブルエッグ、ウインナー、半分に切ったトーストが置いてあり、

 トーストの上にはジャムが乗っていた。


「簡単なものだけど……」


「いや、めちゃくちゃ嬉しいよ。ありがとう」


「そっか。ならよかった」


 照れているのか、顔を伏せている美香。

 その仕草を見ているだけで腹が、いや、胸がいっぱいになりそうだった。


「それじゃ、さっそくいただきます」


 イスに座り、おれは顔の前で手を合わせると、フォークを手に取り、美香の作ってくれた朝ご飯を口に運んでいく。


「うん、うまい」


「よかった」


 おれの食事の様子を見ながら、美香はニッコリと微笑んだ。


 これは朝から元気が出る。

 本当に最高だ。

 おかげで今日も一日頑張れる気がする。


「今日も勉強でいいんだよね?」


「ああ、よろしく頼む。昼はまた何か頼むか」


「ああ、別に気を使わなくてもいいよ?私は海斗の手料理でも全然……」


 顔を赤らめ、少し恥ずかしそうに言う美香。


「そ、そうか……」


 やばいな、かわいさがえげつない。

 見ているだけでこっちもどうにかなってしまいそうだ。

 そんなやりとりを交えつつ、これが幸せなんだと思える時間が過ぎていくのだった。

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