寝言

「……」


 静かだ。

 夜の十一時過ぎ。

 おれは自分の部屋のベッドの上で横になっていた。

 美香は向かいにある客間で寝ている。

 別々で寝ようと言った時、美香は少しだけ不満そうだったが、納得してくれた。

 いや、さすがに一緒になんか寝れないよな……


「ふわーあ……」


 おれは大きなあくびをして、目を擦った。


 今日は色々したから疲れたな。

 明日は早めに起きて朝ご飯作らないとな。


 そんなことを思っている時だった。


 ゴロゴロゴロ……ドドドン!!


 外からそんな爆音が聞こえてきた。


 雷……か?


 おれはベッドから降り、カーテンを開けて、外に目をやる。

 外は大雨がこの時期にしては珍しく、大雨が降っており、天気がすこぶる悪かった。


 雷が鳴るなんてな……

 しかし、まぁこの歳で雷で怖がったりなんてしない。子供じゃあるまいし。


「海斗……」


 すると、部屋のドアが開いたかと思うと、美香のか弱い声が聞こえてきた。


 おっと、この展開はまさか……?


「一緒に寝ていい……?」


 おお、やっぱりか……


「もしかして、雷が怖いのか……?」


「ち、ち、ちがうよ?その……私がいなくて、海斗寂しいかなと思ってさ。あー、私ってなんて気が効くんだろう」


 はははと笑いながら、美香は素早くおれの横に腰掛けてきた。

 その時。


 ドーン!!


 かなり近くで雷が落ちる音がした。


「……」


 そして、小刻みに震えている者が一名。


「死ぬ……」


「いや、死ぬなよ……」


 怖すぎて死ぬってことか……?


「い、一緒に寝ようよ……?」


 まるで子犬のような目で、おれの服の袖を掴んで、そちらを見てくる美香。

 なんですか、この小動物。

 可愛すぎだろ……

 風呂の時はからかってきたのに、今は怖いからって震えているし、すごい変わりようだよな……

 しかし、断ることなどできるわけもなく、おれと美香は同じベッドで寝ることになった。











 ♦︎











「……」


 ね、寝れねぇ……!

 ベッドに入ってからもう二時間は経っただろうか。

 全く眠気がこない……

 隣に美香がいると思うと、心臓の鼓動が早く一方だった。


「スースー……」


 一方の美香は穏やかな寝息を立てている。

 よく寝れるな……

 そういえば、いつのまにか雷も止んでいる。

 安心してそのまま寝たのだろうか。


 おれが意識しすぎなのかな……

 いや、普通、隣に女の子が寝ているとなれば男子は意識するはずだ。

 しかも、こんな美少女。

 なんでおれと仲良くしてくれるんだろうと未だに疑問に思う時もある。


「海斗……」


 その時、美香がおれの名前を呼んだので、おれはハッと美香の方に顔を向けた。


「……」


 だが、美香は目を瞑ったままだった。

 ね、寝言かな……?

 しかし、なんだっておれの名前を……


「えへへ、海斗……」


 幸せそうに笑いながら、再び寝言を言う美香。

 い、一体、どんな夢を見ているんだろうか……


 そんなことを考えていると、ますます寝ることができず、結局明け方近くまでおれは起きるハメになるのだった。

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