たこ焼き

 程なくしてスーパーに辿り着いたおれ達は店内に入り、カートを手に取り、カゴを乗せ、中を歩いていく。


「えっと、たこ焼き粉に卵とソースに、あと……ああ、後はタコだな」


 そして携帯でたこ焼きを作るのに必要な材料を調べ、それらを買い物カゴに入れていく。

 それから、普段買う食材を見つけてはカゴに放り込んでいく。


「手慣れてるね……」


 そんなおれを見て美香が一言。


「まぁ毎週買いに来てるしな」


「主婦じゃん……」


「美香は料理しないのか?」


「うーん、簡単なものならって感じかな。海斗ほど作れないとは思う。お昼休みの時のお弁当は大体、同じものばっかり詰めてるし」


 言いながら、苦笑する。


「そうなのか」


 同じ食材か……

 あまり注意して見てなかったけど、そんなに被ってるイメージはなかったけどな……

 まぁ最初のうちは緊張とかして全然見れてなかったけど。


 おれも弁当作って持って行こうかな……

 んで、ついでに美香の分も……

 まぁ、これはテストか無事に終わったら聞いてみるか。弁当作るなら、早起きもしなきゃだしな。


 そんなやりとりを交えつつ、必要な食材は手に入れたので会計に向かう。


 そして支払いを済ませ、袋に詰めていく。

 袋は計三つになった。

 いつもより、多めに買ったので袋の重さもいつもより違っていた。


「悪いけど、一つ持ってくれるか……?」


「うん、もちろん!」


 二つ返事をしてくれた美香はおれが差し出した袋を持ってくれた。

 渡した袋は比較的、軽いものにしておいた。


「じゃあ帰るか」


「うん!たこ焼き、たこ焼き〜」


 やけに上機嫌な美香と共におれは帰路へと着くのだった。













 ♦︎












「うーん……」


 たこ焼き機を使い、出来上がったたこ焼きを前におれは腕を組み、唸っていた。


 なんか形がイマイチ……

 というか失敗かな……

 皿の上には綺麗にひっくり返せなかったたこ焼きがほとんどだった。

 上手くひっくり返せたが、少し焦げてしまったのもある。中々難しいもんだな。

 まぁ味は問題ないけど、料理は見た目からって言うしな。現にこれを前にして、素直に食べられるかって言われたら微妙な気が……


「いただきます!」


 しかし、そんなおれの心とは裏腹に例外が隣にいた。

 ものすごい勢いで食べていっている。


「あー!美味しいー!家で食べるたこ焼きもオツですなぁ」


 まるでどこかのオヤジみたいなセリフを吐いている。

 片手にビールが似合いそうだ。


「まぁ満足してくれたならよかったよ」


「ジャンジャン焼いてね!ジャンジャン食べるから!」


 勢いよくグラスに入っていたビール……ではなく、コーラを飲み干した美香はそう言った。


「わかったよ」


 そんな美香を見て、おれは苦笑を浮かべた。

 とりあえず、成功したみたいでよかった。


 その後、用意した材料全てを焼き、美香はその細身の身体のどこに吸収されたんだと思うくらい、たこ焼きを食べ尽くした。


 後片付けをしている最中、美香が「またやろうね」と言ってきたので、おれはもっと上手く焼けるようにしようと決意するのだった。

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