誰か

「それじゃあ、テストを返すから、取りに来いー。相川ー」


週が明け、あっという間にテストの日を迎えた。

美香に教えたもらったおかげで、テスト当日を迎えても大丈夫だった。

しかし、テスト中ということもあり、美香とは一緒に帰るだけで美香が家に来ることはなかった。

そしてさらに翌週になり、テスト返却の日を迎えた。

先生が出席番号順に名前が呼ばれていき、テストを返却していく。

きっと大丈夫だ……

手応えはそこそこあったし、赤点を取ることはないはずだ……


加速していく鼓動を抑えながら、おれは名前が呼ばれるのをゆっくりと待つのだった。













♦︎













「で、どうだった?テストは」


本日はテスト返却のみなので午前授業で終わり。

いつも通り、美香と共に並んで道を歩く。


「ああ、おかげさまで平均点ギリギリは取れたよ」


「おー!よかったじゃん、おめでとう!」


「これも美香のおかげだよ、本当にありがとう」


言って、頭を少し下げる。


「いやいや、海斗が頑張ったからだって、私は何も」


「あのさ、テストも終わったことだし、遊びに行かないか?ほら、ゲーセンに行きたがってたろ?」


「え!?うん!行こ行こ!ほら、早く!」


おれの言葉を聞いた美香はやけに興奮した様子でおれの腕を引っ張ってきた。


本当にゲーセン好きなんだな……

というか、メダルか。

なんというか、美香は見ていて飽きない子だよな。表情もコロコロ変わるし、楽しい。


その時だった。


「……」


誰かに見られている気がして、おれは咄嗟に後ろを振り返った。


「どうしたの?」


おれが突然後ろを振り返ったので、美香は首を傾げた。


「いや、なんでも……」


気のせいか……?

おれ達がいるのは見通しの良い道だ。誰かがいればすぐにわかる。

そして、通行人は少し離れたところにいるだけで他にはいない。


「きゃっ!」


そんな中、続け様に誰かの叫び声が聞こえてきた。

と、ほぼ同時に何かが地面にぶつかり、壊れる音が聞こえてきた。


音の方に目をやると、少し離れたところにあるマンションに住む女性が植木鉢を落としてしまったようで、それが地面に当たり、壊れた音だった。

幸い、近くには誰もいなかった。


偶然か……?

まぁマンションからここまでは離れている。

もし、足を止めていなかったとしてもおれ達に当たったとは思えない。

でも、マンションのベランダには落下防止のために大人の胸元辺りの高さまである壁がある。

そこからわざわざ植木鉢なんか落とすか……?


「植木鉢なんて、危ないね」


「ああ、そうだな……」


いや、変に考え過ぎた。

あの女性が何かに関係しているなんて……

部長が第三者に何かをさせるなんて、高校生だし、そんな力あるわけない。漫画の見過ぎだ。

なるべく気にしないようにしながら、おれ達は道を歩いて行くのだった。

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