ハンバーグ!

 翌日の放課後。


「お邪魔しまーす」


 昨日同様、美香は家にやってきた。

 もちろん、勉強を教えてもらうのと晩ご飯を振る舞うためだ。


「じゃあ昨日と同じようにリビングでお願いします」


「はーい」


 そうして、玄関で靴を脱いだ後、おれ達はリビングへと向かい、テーブルイスに座り、教科書とノートを広げる。


「じゃあ今日は数学ね?」


「ああ、頼む」


 英語の次に苦手な数学。

 数式を見ているだけで眠くなってきてしまうほどだ。

 しかし、今はそんなことを言ってられない。気合入れないとな。











 ♦︎











「問題。次の関数を微分せよ。

(1) y=x3-3x2-3x-6

(2) y=(x+2)(x-4)2」


「えーと……」


 美香が出した問題に対し、おれは頭を悩ませながら、ノートに答えを書いていく。


「うん、正解」


「あーよかった……」


 ほっと安堵しつつ、おれはイスにもたれかかった。


「でも、まだ安心はできないよ?応用問題だって出てくるだろうし、それを想定して、いろんな問題を解かないと」


「だよな……」


 美香の言葉におれは項垂れた。

 現実って厳しい……


「でもまぁ覚えは早いし、なんとかなりそうだけど。高得点狙ってるわけでもないんでしょ?」


「ああ、赤点さえ取らなきゃいいって思ってるし」


「じゃあ大丈夫かな」


「それよりさ、少し休憩しないか?なんか頭使ったら、やたら腹減ってきてさ……」


 言いながら、時計を見ると勉強を始めてまだ一時間ほどしか経っていなかったが、昨日よりも何故か腹の減り具合が早い。


「んー、まぁ休憩も必要だしね」


「助かる。それじゃ用意するよ」


 言って、おれは台所の上にある棚を開ける。


「用意って?」


「疲れた時は甘いものかなって思ってさ」


 そう言ってから、おれは棚に入っていたチョコやらスナック菓子をいくつか取り出し、それを皿に盛る。そして、冷蔵庫からペットボトルに入った紅茶の飲み物を取り出し、片付けたテーブルの上に置く。


「さ、どうぞ」


「用意いいんだ……いただきます」


 運ばれたお菓子を前に美香はそう言った後、チョコを一つ摘み、口に運ぶ。


「んー、やっぱり甘いものはいいね」


 言って、幸せそうに顔を綻ばせる。

 相変わらずの可愛さにおれは何故か照れてしまう。


「あ、晩ご飯、何かリクエストあるか?」


「あ、言っていいの?」


「ああ。まぁ食材も限られてるし、作れないのもあるけど、大抵のものなら大丈夫だし」


「すご……それじゃあ、ハンバーグとかは?」


「ハンバーグか。うん。挽肉は買ってあったはずだし、わかった」


「えー、めちゃくちゃ楽しみ……」


 美香はまるで御馳走を作ってもらえる子供のような目でおれを見ていた。

 その期待を裏切るつもりは毛頭ないが、いつもより気合いを入れて晩ご飯を作る決意をするのだった。

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