その言葉の意味は
「お邪魔しまーす」
放課後。今朝の約束通り、勉強会をするため、美香は家にやってきた。
「相変わらず、親は不在だから遠慮しなくてもいいからな」
「あ、そっか……一緒だ……」
「え?」
「あ、ううん、なんでもない。それより、早速始めよっか」
「あ、うん」
一緒って、どういう意味なんだろうか。
おれは美香の言葉が気になりつつも、玄関で靴を脱ぎ、リビングに入り、テーブルの上に教科書とノートを広げ、イスに座る。
「んしょ……っと」
「……!」
しかし、まさかの美香が隣に座るとは思っていなかったので、おれは目を見開いて驚いてしまう。
そ、そうだよな……
勉強を見てくれるんだから、隣に座るよな、普通……
しかし、こんな至近距離なんて……
なんか良い匂いがしてくるし……
これって香水……?
いや、シャンプーの匂いかな……
「ん、おーい、どうしたの?」
「え……あ、いや、なんでもない……」
美香のその声で現実に戻ったおれは慌てて、教科書に目を落とした。
匂いが気になって、気を取られてしまっていたが、そんなことよりこっちに集中しないとな……
♦︎
「私が何も見なかったということは本当です。
_ I didn’t see anything。_に入る言葉は?」
「えーっと…… It’s true thatかな……」
「うん!正解。だんだんわかってきたね」
「おかげさまでな……」
正解だったので一安心しつつ、おれは再び教科書に目を落とした。
勉強を開始してから、二時間が過ぎようとしていた。
今日はおれの苦手な英語から始めることにした。
最初は間違いばかりだったが、美香が一時間近くかけて文法の使い方や意味などを細かく説明してくれたので、ようやく正解が分かるようになってきた。
「いつのまにか外も暗くなってきちゃったね」
ふと外に目をやった美香がそう言った。
言われてみれば、リビングの電気は点けたが、カーテンを閉めていなかったので、外から丸見えだったので、おれは慌ててカーテンを閉めにいった。
「もう暗くなってきちゃったし、今日はそろそろ終わりにするか」
「あ……わ、私はまだ大丈夫だけど……」
「そうか?あ、じゃあさ、晩ご飯食べて行かないか?」
「え……?」
「ああ、でも迷惑だったら別に……」
「食べる!むしろ食べたい!!」
くわっと目を見開いた美香が食い気味に言ってきた。
「ああ、うん、ならよかった……」
すごい迫力だったな……
そんなに腹ペコなのかな……?
「じゃあ、準備するからソファに座って待っててくれ」
「うん!あー、楽しみだなぁ!」
やけにウキウキとした声で美香はテーブルイスから立ち上がり、片付けをした後、ソファに座り、携帯を触り出した。
これは下手な料理は出せないな……
さて、どうするか……
食材は限られている。
うーん……
おれは少し頭を悩ませるのだった。
何気に家族以外の誰かにご飯を作るのって初めてだしな……
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