二章

勉強

 文化祭も終わり、おれは激しく絶望していた。


「いや、わかんねー……」


 机の前に座り、教科書に載っている問題をなんとか解こうとするが、全くもって意味がわからない。ちんぷんかんぷんとはこういうことかと無駄に思ってしまう。


 というのも、うちの学校はバカなのか、なんなのかわからないが、文化祭が終わって十日後には中間テストがある。

 緩んでるところを狙ってなのか、緩ませるのを阻止するつもりなのかわからないが、とにかくテストがある。いや全く、鬼畜にも程がある。

 今年は去年と違い、色々忙しかったし、何かしらあったから、勉強が全然できていなかった。


 ちなみにおれは勉強はあまり得意ではない。

 予習、復習をしてなんとか平均点ギリギリなので、少しでも怠ってしまうとあっという間に奈落の底である。


「まずいな……」


 このままでは赤点必須になってしまう。

 それだけはなんとしても阻止したい……













 ♦︎













 翌日。いつものように学校に行くため、美香と待ち合わせをする。


「おはよー……って、なんか疲れてない?」


「ああ、昨日徹夜しててさ……」


 おかげで寝不足だ。

 今すぐにでもベッドに入りたい。


「なんかしてたの?」


「勉強だよ。ほら、もうすぐテストだし……」


「あーなるほど。海斗って勉強苦手なの?」


「得意ではないかな……美香はどうなんだ?」


「まぁ平均点は取れるよね」


 言いながら、ふふんと鼻を鳴らす。


「まじか。うらやましいよ……」


「うーん……あのさ、良かったら私が勉強教えてあげよっか?」


「え、いいのか?!」


 おれはたちまち顔を輝かせる。

 勉強を聞けるような人も近くにいないし、それはとても助かる。


「うん。まぁ海斗には色々お世話になってるし……」


「美香……」


 少し恥ずかしそうに言う美香。


「それじゃ、早速今日からでいいかな?放課後、ファミレスとかでさ」


「あー、ならさ、うちに来ないか?」


「え……?」


「あ、ああ!別に変な意味じゃなくてさ。外だと雑音もあるだろうから、家の方が集中しやすいし」


「んー、そういうことなら別にいっか……わかった。じゃあ海斗ん家でやろっか」


「ああ、助かるよ」


 というのは建前だ。

 本当は人気の多いところに美香をあまり連れて行きたくない。それは決してやまない気持ちからではなく、何かあったら困るから。

 部長が学校から去ったとはいえ、どこにいるかわからない。

 またいつ狙ってくるかわからない。

 だから、家に来てもらった方がこちらも安心というわけだ。

 これって過保護かな……?

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