終焉
翌日の文化祭も盛況だった。
昨日と違い、平日なのでそこまで混んではいなかったが、それでもどこのクラスも忙しそうにしていた。
「なるほど、つまり、その部長が犯人だと……」
「ああ。しかし、証拠もないし、自白したわけでもない。完全にこっちの負けだよ」
「それでも、特定できたんだからすごいじゃないか。後はそいつの言った言葉が本当だと信じるしかないよな……」
「ああ……っていうか、なんでここにいるんだ……?」
昼の一時過ぎ。
おれは食堂でご飯を食べていた。
向かいの席には何故か稲元がいて、うちの制服ではない学ランを着ているので、明らかに浮いている。
というか、今日は学校のはずだろ……?
「バカやろう。心配で学校なんて行ってられるかよ。サボってきたわ」
「いや、その気持ちは嬉しいけど、サボるのはダメだろ……」
「いいんだよ。それくらいさせてくれ」
言って、豪快に文化祭限定の焼肉定食を食べ進めていく。
まぁめちゃくちゃ良いやつってのはわかったけどな……
それより、問題は部長の方か。
今朝、田村に確認したが、転校するのは事実らしい。
だからこそ、それまでに立派な記事を作りたいと意気込んでいたらしい。
新聞にかけるその情熱は本物だろう。
しかし、それ以上に美香に対する何かがあるように感じる。
嫉妬……恨み……いや、復讐か……?
いや、それはもしかしたらおれに向いているのかも知れない。
美香と仲良くしているから……?
だとしたら、そんなことであそこまでするかな……
「おーい、何考えてんだ?」
頭を悩ませるおれを見て、稲元はおれの目の前で手をブンブンと振ってきた。
「え?」
「早く食べないと冷めちまうぞ?それにこういうときは悩んでばっかいないで、飯食って体力つけないともたないぞ?」
「あ、ああ、そうだな……」
「それに何か起きるって思うなら、彼女のそばを離れない方がいいんじゃないか?距離を置くよりもさ」
「そう……だよな……」
「ああ、その方が彼女も喜ぶと思うしよ。それじゃあ、飯食ったらメイド喫茶行こうぜ」
「いや、それはお前が行きたいだけだろ……?」
「何言ってんだよー。彼女のそばにいるために決まってるだろ?」
言いながら、明後日の方角を向く。
図星だな……
♦︎
「じゃあ帰るか」
「うん」
まもなく夜になる六時前。
おれと美香はカバンを持って、学校を出た。
二日間あった文化祭もなんとか無事に終わりを迎えた。
昨日以降、部長がおれ達に何かをしてくることはなかった。
しかし、必ずまた何かをしてくる。
そのためにもおれは美香の側にいなければならない。
彼女が傷つくのを黙って見てることなんて、できないから。
でも、なんでこんな感情が芽生えてくるんだろうか……
まぁ、友達が傷つくのは誰だって嫌だしな。
きっとそういうことだろう。
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