スタート
様々な思いが渦まく中、いよいよ文化祭当日となった。
「それではただ今より、文化祭の開始を宣言します!」
朝九時に実行委員長の放送により、文化祭はスタートした。
祝日と言うこともあって、学校には多くの人が訪れてきた。
文化祭は今日と明日の二日間に渡って開催される。
そんな大盛況な文化祭の中、おれはデジカメを首からかけて、学校内を動き回っていた。
それはもちろん新聞部の手伝いのためだ。
おれは各学年のクラスごとに回りつつ、その様子を車種に収めていく。
どのクラスもかなり盛り上がっており、文化祭は成功していると言ってもよかった。
廊下は歩けないほどではないが、人で混み合っているし、先程クラスの出し物である喫茶店を覗いてきたが、かなり列ができていて、全員が忙しそうに動き回っていた。
でも、その顔は活き活きとしていて、おれも思わず、写真を多めに撮ってしまった。
しかし、それ以上に盛り上がっているのが隣のクラスだった。
「はいはい!ただいま四十分程度でご案内しています!」
入り口付近にいる女子の声が辺りに響き渡る。
その案内の通り、長蛇の列が出来上がっていた。
それもそのはず。隣のクラスの出し物はメイド喫茶だからだ。
そして、一際人気なのが。
「ちょっと!そこ写真撮らない!うちはそういう店じゃないから!」
少し怒りのこもった声でカメラを傾けている客にそう言う。
「さすがだな……」
そんな一言がつい出てしまう。
隣のクラスのお目当てはもちろん、美香だ。
意味不明なくらいメイド服が似合っている。
それにいつもより、肌の露出はないはずなのに、そのスタイルの良さがやけに際立っている。
美香は忙しそうに注文された品を運びながら、接客をしていた。
「あ、海斗……!」
そんな激混みな中、美香は外にいるおれを見つけた後、こちらに駆け寄ってきた。
なので、美香がこっちにやってきたもんだから、おれにも注目が集まってしまう。
「お昼にはさ、休憩もらえるから一緒に何か食べに行かない?!」
「え、あ、うん、良いけど……っていや、それはまずいんじゃないかな……」
あの手紙のこともまだ解決していない。
そんな中、しかもこんな人混みの中、美香に何かあったら困る。
「大丈夫だって。そんなの気にしてないし、一年に一度しかないんだから、回りたい人と回りたいもん」
しかし、美香の意思は固いようだった。
「それじゃあ後でまた連絡するね!」
そしておれの返事を待たず、美香はそう言って再び教室の中に戻っていってしまった。
「「……」」
一方、周りのギャラリーに注目されているおれ。外にいる人はもちろん、これから入る人からもものすごい視線が注がれてくる。
あいつは一体何なんだと言わんばかりの目が向けられている。
そりゃそうだよね……
まずい、非常に困った。
「……」
とりあえず、カメラの電源を入れ、何枚か写真を撮って、そそくさとその場を後にする。
もちろん、その後美香に質問が殺到するのは目に見えていた。現に教室内がいっそう騒がしくなったからだ。
美香、頑張ってくれ……
おれは心の中でそう祈るしかできなかった。
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