違和感
文化祭も翌日に迫ったある日。
おれは先ほど撮った写真を収めたカメラを田村に渡した。
そして、それをパソコンに取り込み、選別していく。
部室内には田村以外にも部員がおり、忙しそうに作業を進めていた。
それも当然だ。
新聞部は文化祭の準備の様子を記事にし、明日掲示及び配布することになっている。
もちろん、文化祭当日の様子も記事にする。
しかし、まずは今日準備の様子の記事を今日仕上げ、印刷しないと間に合わないのである。
なので、今必死に作業をしているわけだ。
「……」
そんな部員達とは裏腹におれはパイプ椅子に座り、ぼーっと窓から外を眺めていた。
ここ最近、おれは美香と距離を取っていた。
もちろん、あの手紙が原因だ。
これ以上、美香に何かあったら困る。
それに幸いというか、今は文化祭の準備でお互い忙しい。
一緒に帰る頻度も少なくなっていたし、無理して帰るのを合わせる必要もない。
行きは毎日一緒だったが、それもやめた。
美香は少し不満そうだったが、それでも安全には変えられない。
待つしかないんだ。今は。
「あ、帰ってもいいよ?」
すると、いつのまにか作業を終えていた田村がそう話しかけてきた。
「え、あ……」
「ありがとうね。色々撮ってくれて。いい記事にするからさ、明日明後日も頼んだよ」
「あ、ああ、それはもちろん」
「気をつけてね」
それだけ言って、再び田村は作業にとりかかった。
確かにもうやることはないし、帰るか……
おれはパイプ椅子にかけていたカバンを掴むと、立ち上がり、そのまま部室を出た。
そして、とぼとぼと廊下を歩いていると。
「今、帰りかい?」
反対側から新聞部の部長がやってきた。
「あ、はい。おれにできることはもう終わったんで……」
「そうか。ありがとう、助かったよ。明日からもよろしく頼む」
「あ、はい、それはもちろん」
「時に最近、松原君と何かあったのかな?」
「え……?」
「いや、何、最近君達があまり一緒にいるところを見ないと聞いているから何があったのかなと思って」
「ああ、いや別に……お互い忙しいんで、たまたまですよ」
「そうか……うん、まぁ本人が言うならそうなんだろうな、変なこと聞いて悪かったね。それじゃまた明日」
「……」
そう言って、部長が去っていくのをおれはジッと眺めていた。
やけに美香のことを気にするんだな……
それに距離を置いているのは少し前からだ。
そんなすぐに噂になるものなのか?
い、いやいや、変に考えすぎた。
きっとおれ達のことを心配してくれただけに決まってる。
心ではそう思うのに……
何故だろう……
心には違和感しか感じていなかった。
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