謝罪

「……」


 夜。家についてから、おれはベッドの上に寝転がり、ずっと頭を悩ませていた。


 あの後、おれ達は再び職員室へ入った。

 その後、美香にはそのまま家に帰ってもらった。

 もちろん、きちんと家の近くまで付いて行った。もし、おれがいなくなった瞬間に何かあったら困るからだ。


 美香の側にいれば、酷い目に合う……

 そんなことをする人物は誰なんだろうか。


 頭を悩ませている内に、おれは一人だけ思い当たる人物がいた。

 そして、携帯を手に取り、メッセージアプリに文字を打ち込む。


 まさかこっちから連絡を取る日が来るなんてな……

 仲良いアピールで無理やり教えられた連絡先だが、こんな時は有り難いと思ってしまう。

 しかし、この前、あんなことがあったんだ。

 何かするなら、今のおれにはこいつしか考えられなかった。


「あ……」


 すると、ものの数分で返事がきた。

 急だが、明日の放課後会うことになった。


「……」


 おれは携帯を枕の横に置き、ゆっくりと目を瞑るのだった。












 ♦︎











 放課後。

 おれは駅前に来ていた。時刻は夕方の四時すぎ。

 そろそろ来るはずだ。


「よお、待たせたな」


 おれが携帯の時刻に目を落としていると、そんな声がすぐ側から聞こえてきた。

 おれは携帯をスラックスのポケットのしまい、顔を上げた。


「まさか、お前から連絡来るなんて思わなかったからさ、びっくりしたよ」


 言いながら、はははと笑い声を上げる。


「ああ、少し聞きたいことがあってさ……」


「聞きたいこと……そうか。いや、実はオレもお前に言いたいことがあってさ」


「言いたいこと……?」


 まさか、やっぱりこいつが犯人なのか……?

 そう考えると途端に心臓の鼓動が早くなってくる。


 おれが連絡を取ったのは、他でもない稲元だった。

 唯一、美香に恨みを持っていそうな人物だったからだ。

 この前、こいつの裏の顔を美香はたった一瞬で見抜いた。

 その時、こいつは何を言うでもなく、地面を見つめ、黙り込んでいた。

 プライドを傷つけられ、あの時の思いが怒りになり、復讐という形になってもおかしくない。そうおれは思った。


「今まで……悪かった!!」


 しかし、おれの想像とは裏腹に稲元は思いっきり、頭を下げてきた。


「え……?」


 稲元が頭を下げてきたので、周りの通行人達もこちらを何事かと見ている。


「い、いきなりなんだよ……と、とりあえずここじゃまずいから……」


 言って、おれは別の場所に行くように促した。


 な、何がどうなっているんだ……?

 突然の行動におれの頭は混乱するばかりだった。

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