服装
週明けの月曜日の放課後。
「あー……」
おれは両手に荷物を下げながら、学校までの道を歩いていた。
重い。とにかく重い。
このまま腕が撮れるんじゃないかと思える程だ。
「はぁ……」
ため息を吐きつつ、重い足取りでゆっくりと歩いていく。
見栄を貼って、一人で大丈夫なんて言うんじゃなかった。
いや、見栄と言うよりかは、誰かと一緒に行くのが困るだけだ。
だって、普段全く喋らない奴と買い物なんて行きたくないだろ?
だから、一人で大丈夫と言ったのだが、その考えは間違いだったようだ。
今日からいよいよ文化祭に向けての準備が始まった。
おれは新聞部の手伝いもあるので、比較的簡単な買い出しという役目を担った。
買い出しが終わってからは各クラスの風景を写真に収めることになっている。
しかし、百均で食器からなんやら沢山買ってきたが、とにかく重い。
片道、二十分の距離を倍くらいの時間をかけて歩いている。
「あー……」
僅かな距離が果てしない道のりに思えながら、おれは歩いていくのだった。
♦︎
「ここはお化け屋敷をやるのか……」
買い出しから無事に戻ったおれはカメラを片手にまずは同学年の各クラスを回っていた。
隣の三組はお化け屋敷をやるようで、黒いビニール袋を切ったり、何かの模型……いや、マスクでも作っているのか真剣に何かを作っている人達がいた。
おおお、まさかの目玉か……
やけにリアルで気持ち悪いな……
そんなことを思いつつ、カメラで写真を撮っていく。
にしても、こんな感じでいいのかな。
思いっきり素人が撮ったってわかりそうな写真だが、果たして採用されるのだろうか。
「ん?」
三組の写真を撮り終え、今度は五組の写真を撮りに向かったのだったが、何やら教室内で人だかりができていた。
なんだ、あれ。
「やっぱり似合うー!持ってきて正解だったかも!」
すると、やけにテンションの高い女子の声が聞こえてきた。
「なんで持ってんのよ……!しかも、サイズぴったりだし、まじあり得ないんですけど……」
それとは対照的にどこか恥ずかしそうで、若干というかかなり怒りが篭っている声が聞こえてくる。
うん、間違いない。この声は……
「てか、わざわざ集まんなくていいから!サイズが合うってわかったんだから、もう終わりでいいでしょ……!?」
言いながら、その人だかりから駆け出してきた。
「あ……」
「よ、よう……」
そして、教室の外にいるおれと鉢合わせする。
人だかりの中心にいたのはもちろん美香だった。
おまけにメイド服に身を包んでいる。
いつもより肌の露出も多く、その豊満なスタイルが強調されており、正直、どこに目をやればいいかわからない。
「これは……その……」
露出部分を隠すように美香は身体を抱きしめようにする。
「着てみてほしいって言われただけだから……!」
恥ずかしさが限界にきたのか、そう言って、おれの前から全速力で去って行ってしまった。
「……」
めちゃくちゃ似合うな……
後ろ姿を見ながら、おれはそんなことを思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます