クラスメイト

 翌日。

 学校にいこうと支度をして家を出る。


「……」


 すると、家の前には美香がいた。


 おれは反射的に玄関のドアを閉めた。


 なんで……?

 なんで家の前にいるの!?

 家、バレてんじゃん。

 いや、別にバレてもいいんだけど、まさか家の前にいるとは思ってなかったよね。

 もしかして、昨日別れた後、つけられてたのかな……

 しかし、無視するわけにもいかないし、あんまり待たせるのもあれだしな。

 まぁ、待ち合わせしたわけじゃないけど、ここにいるってことは、つまりそういうことだよな。


 おれはゆっくりと玄関を開けた。

 そして、美香の元に歩いていく。


「あ!おはよ!」


 おれに気づき、こちらを向き、満面の笑みで挨拶をしてくる。

 そのかわいさと神々しさから、おれは浄化されそうだった。


 この威力、迫力、もし悪魔がいようもんなら、たちまちお陀仏だろうな……


「一緒に登校しようと思ってさ、迷惑だった……?」


 そう上目遣いで言ってくる美香。

 くそ!なんなの、この子!次から次へとかわいいの何なって!こんなの断れるか!


「め、迷惑なわけないって……」


「よかった……!じゃ、行こっか!」


「あ、ああ……」


 少し照れ臭くなりながらも、こうして、おれと美香は一緒に登校するのだった。

 そして、昨日同様、昼休みも一緒に過ごし、下校も過ごし、そんな状況が早一週間続いた。












 ♦︎












「ねぇ、ちょっと話があるんだけど」


 一週間後の水曜日のこと。

 一時限目が終わり、休み時間に入った時、声をかけられた。


「え、おれに?」


 モブに何の用だよ?

 美香以外に声をかけてくる人がいるなんて、ありえないんですけど。


「そう。あなたに」


 そこには、髪はショートカットの黒髪で黒ぶち眼鏡をかけた小柄な女の子が立っていて、胸ポケットにはメモ帳とペンがささっている。

 顔は結構、童顔な感じに見える

 まぁ、有り体に言えばかわいい。


「一体何の用?ってか誰?」


「え、クラスメイトの田村たむら ゆいだけど……」


 目の前の女の子は驚いた表情を浮かべた。

 クラスメイトだったのか、それは驚きだ。

 まぁ、クラスのほとんどの連中の顔、覚えてないから当たり前といえば当たり前なんだけど。


「まさか、クラスメイトの顔、覚えてないとか……?」


「悪い。おれの頭のキャパ、めちゃくちゃ狭くて」


「いや、絶対嘘でしょ……って、そんなことより、聞きたいことがあって。あなた、どうやってあの松原さんと仲良くなれたの?」


「え……?」


「だってあの人、ほとんどの人と関わらなくて、しかも、話してもいつも塩対応だし、氷の女王なんてあだ名つけられてるくらいだから。なのに、最近、あなたと毎日のように登校したり、昼休み過ごしたりしてるって聞くから、どうやって仲良くなったのかなって」


「いや、別に……」


 やっぱり、毎日のようにああやって過ごしてればそうなるよな……

 それより、氷の女王って……

 皮肉すぎるあだ名だろ。


「別にってことはないでしょ。何かしたから、仲良くなれたわけだし」


「いや、本当に……ちょっと身体張ったくらいだから……」


「身体張ったって……!何、暴漢から守ったとか!?それとも、実は松原さんはお嬢様で無理やり、結婚させられそうなところを助けたとか!?うわー!ものすごいドラマの予感!」


 田村はおれの言葉を聞いた瞬間、一人で色めき立つ。

 やばい、完全に言葉のチョイスミスった。


「こうしちゃいられない!記事書かなきゃ!」


 そして、興奮したまま、教室から出て行く田村。


「っておい、もう次の授業始まるぞ!?」


 あーあ、聞いてないよ、行っちゃった。

 それより記事ってなんなんだ……?

 いや、記事ってまずくないか……?

 うん、確実にまずいな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る