#48 初めて読書をしている
AmazonKindleのデバイスを購入してしまった。知人がiPadで本を読み、蛍光ペンで気になる部分に線を引いているのを見た(もちろん物理的にインクを塗りたくっているわけではない)。それを見て、ただ単純にかっこいいと思ってしまった。電子書籍というものにあまりいい思いを抱いていなかったのだが、よく考えてみるといくつかの点で自分に合っているのではないかと感じた。
まず、私はゴールの位置がわかっているとモチベーションが下がってしまう。まだこれだけ残っているのかとか、もうすぐ終わりそうだとか、そういうことがはっきりした瞬間に、嫌になったり油断したりする。小学生の時、計算ドリルなどの問題集を説いていたときは典型的だった。こんなに問題があるのかと思うとペンを放り投げたくなる。逆に、例えば時間を測って速さを追求しているときなどは、終わりに近づいていると自覚した瞬間にスピードが落ち、計算間違いを連発する。だから、できるだけ後何問残っているのかを意識しないようにしながら問題を解いていた。
電子書籍は、わざわざ確認しなければあと何ページなのかがわからない。そもそも紙の本では残っている紙の分厚さを、触覚で感じてしまう。触覚ほど防げないものはない。
また私は片付けが苦手だ。去年、就職と同時に引っ越したのだが、1年間社宅に住んあと追い出され(もともと決められていたことであり、家を傷つけたり騒いだりしたわけではない)、さらにもう一度引っ越しをして今に至る。だが未だに本を詰め込んだ大量の段ボールが積まれている。2年間弱、段ボールから本を取り出せずにいることになる。読みたいと思ったら段ボールの中を漁ってなんとか引っ張り出す。実体化された本を持つことが苦手なようだ。なので電気的な信号に変換して薄っぺらい板に保存された本を、電気的な処理によって引っ張り出してくる方が性に合っているようだった。
そしてこれは最も重要な点なのだが、私は読みたいと思った本を頭の中で渋滞させてしまうことが多い。今はこれを読みたいしあれも読みたい。だから全部手元に置いておきたい、となる。結局、外出のときには大量の本をずっと鞄の中に入れておくことになる。外出でなくとも、家で本を読むときにも本棚や段ボールの中から取りだして身体の近くに置いておかなければならない。だが実際に読むのは、多くてもそのうちの2冊ほどだ。読んでいる最中に読みたい本が切り替わる。人並みなのかはわからないが、自分はかなり飽き性なようで数ページ読んだ時点で他の本が読みたくなる。手元と鞄の中では、数ページごとに読む本を切り替えるには手間がかかりすぎる。なので仕方なく読書モチベの下がってしまった本をだらだらと読み続ける。そして読むこと自体が嫌になり本をスマホに持ち替えてネットの海へと沈んでいく。これを電子辞書で防ぐことができるようになり、本を読むペースを一定に保つことができるようになった。
人生で初めて、乱読という行為をしている。頭の中がたくさんの用語や意味で埋め尽くされている。これが、人間として生きるということなのだと感動している。大げさかもしれないが、これまでは読書障害のようなものを抱えていたのだと思う。それを電子書籍によって一部克服することができた。人生が1つ豊かになった気がする。
2022年1月28日
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