#33 電子のまどろみ

 眠りにつきそうでつかない、まどろんでいる時間は楽しい。様々な光景が現れては消えていく。意識というものは流れで、どこか別の所からやってきてまた別の場所に去っていく。自分の中から湧き出してくるのとは違う気がする。

 心の奥底には何があるんだろう。深く深く潜って泥の中をかき分けていく。0と1の砂煙が舞い上がる。文書ファイルのようなものが見つかった。開いてみると、改行を表すマークがずらずらと続いている。スクロールしていくと、画像が貼り付けてあった。頭から階段を落ちていく人形の静止画だった。

 人形の目はくぼんで黒くなっていた。「目がない」状態に強い恐怖を抱いてしまい、そんなファイルはなかったんだと削除を押した。ゴミ箱に移動されたが、どこにゴミ箱があるのか知らなかった。文書ファイルはまた心の奥底へしまい込まれた。


2021年2月13日

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る