#28 影潜り(シャドーダイブ)


 影の中に入る機械が置かれている。そんなまさかと思いながらガシャンとレバーを引くと、その装置がずぶずぶと影の中へと沈んでいく。装置だけじゃない。周りの棚や扇風機、仏壇、そして私自身も影の中へと吸い込まれていく。世界が闇に沈もうとしていた。影のくじらが泳いでいる。その周りを影のコバンザメがひっついて泳いでいる。触ろうとすると猛烈な水流によって吹き飛ばされてしまった。

 影のくらげに受け止められ、その触手が巻き付いてくる。息が出来ることに気がついた。楽しい。ずっとこの世界に住んでいたいなと思った。

 下の方でサメが旋回していた。自分のことを狙っているのかもしれない。急に怖くなって足をばたつかせるけど、クラゲが離してくれない。一直線に向かってくる巨大なサメは横から巨大な銛で突き刺される。銛は光だった。光の手を掴む。光の世界へと引っ張り上げられる。影に濡れた私にとって光の世界は寒かった。私は影が恋しかった。助けてくれてありがとうとは、言えなかった。


2021年2月8日

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