#6 掃除という名の観光ツアー
自分が通っている会社では、2週間おきに職場を一斉に掃除する。机、ロッカー、冷蔵庫、水回り……とにかく普段掃除しないところを各々が早い者勝ちで役割を決めていく。自分は新人だから、布巾で机を拭いてハイおしまいというわけにはいかない。当然水回りなどの人気のないところをやらされる。
人気のない掃除場所の1つに喫煙所があった。私は趣味で小説を書いているわけだが、喫煙所というものは小説を書く上で非常に使いやすい舞台でもある。私は喫煙が習慣付いてはいなかったし、会社でも吸わない側の人間をやっているので喫煙所に入る機会はない。だから掃除という名目で喫煙所を隅々まで観察することにした。
コンクリートがむき出しの床。その上には塗装がはげて赤く錆びたバケツ。何度も蹴飛ばされたのだろうか、側面がベコベコになっている。壁はうっすらと黄ばんでおり、雑巾で擦ってみるとそこだけ本当の白さになった。建物の少し奥まったところにある喫煙所は、プレバブで作られた聖域だった。時代から取り残され、世間から疎まれているからこそ、より趣深さが増しているように感じられた。
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