#7 無差別酔拳

 寝ている時は自分の身体を制御することが出来ない。これは厄介なことだ。私は非常に寝相が悪いらしい。中学ぐらいまでは母と父と同じ部屋で並んで寝ていたのだが、その時の寝相の悪さは相当だったようで、よく苦情を言われた。私が幼いときは寝相が悪くても大した問題はなかったが、身体が大きくなってくると振り下ろされる拳やかかとの威力も急上昇する。足が父親の顔に落ちた時はさすがにブチ切れてしまったようで、私の片足に何度も打撃を加えたらしい。私は夢の中で足に痺れるような痛みが走っていたので、きっとそれが原因なのだと思う。

 現在は一人暮らしだから寝ている時の私の姿を見る人は誰もいない。一度定点カメラか何かで撮影してみようかと思ったこともあるが、撮影しているということを意識すると普段と違う寝相になってしまうかもしれない。

 シュレディンガーの寝相はもうしばらく謎のままだ。

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