俺らは学園祭に恵まれない
学園祭当時、学校に着いてすぐに天沢先生から電話がかかってきた。
「もしもし、また今年も問題発生じゃないでしょうね」
「ピンポーン!問題発生!」
「呑気だな‼︎で、なにがあったんです?」
「メイド服がハサミかなんかで切られてる」
「は⁉︎俺の夢になんてことを!」
「俺の夢野に?なに言ってんだ!」
「言ってないから‼︎てか、犯人は三年生のメイド喫茶やるクラスだと思いますよ?」
「なんでだ?」
「ライバルだからじゃないですか?」
「でも別に競う必要ないだろ」
「確かに」
「んじゃなんでやったんだよ!」
「知るか!俺がやったみたいに言うな!」
「犯人探し頼むわ」
「え、天沢先生は探さないんですか?」
「私は学園祭を楽しむ!」
「おい」
「とにかく早めに見つけてなんとかしろよー」
「ちょっと⁉︎」
電話を切られてイライラしていると、愛莉が慌てた様子で走ってきた。
「メイド服が大変なことに!」
「今天沢先生から聞いた。メイド服なしでやるしかないだろ」
「それ、メイド喫茶の意味あるのかしら」
「美少女喫茶にでも名前変えとけ」
「今更無理よ。夢野さんと秋月さんが外でチラシを配ったり、いろんなところに貼っている最中だもの」
「んー、まぁなんとかなる!去年もなんとかなっただろ?」
「去年?」
「あ、去年の学園祭は愛莉居なかったか。去年も問題を乗り越えて、良い結果出したんだよ」
「そう。それじゃ頼りにしているわ」
「おう」
頼りにされても困る‼︎犯人見つけたとしても、メイド服はどうにもならないだろ‼︎
「それじゃ私達は通常通りに準備していいかしら」
「そうしてくれ」
「分かったわ」
愛莉にカバンを預けて最初に向かったのは体育館だ。特になんの意味もないが、とりあえず体育館で学園祭のスタートを見守ることにした。
それから約15分、琴葉がステージに上がった。
「今日と明日の二日間!学園祭が終わってしまえば、私は生徒会長としての役目を終えます!そこで、今回の二日間!一番お客さんを呼べたクラスに、今まで生徒会を支えてくれたお礼を込めて、食堂のメニュー1カ月無料券を配ります!さぁ!これより、花苗坂高校学園祭スタートでーす‼︎」
学園祭のスタート、食堂の無料券イベントで体育館のボルテージは既に最高潮だ。食堂のご飯はあまり食べたことがないけど、確かに美味しかったしな‥‥‥このいきなり始まった無料券イベント‥‥‥もしかして犯人はこれが目当てか?
ひとまず調理室に向かうと、ぞろぞろとお客さんが帰っていくのが見えた。
「メイド喫茶って聞いてたのにメイド服着てなかったねー」
「あれじゃ詐欺だよ」
お客さんの会話を聞きながら調理室に入ると、お客さんは誰も居なく、みんなテンションがガタ落ちしていた。玲奈は今日を楽しみに、今日まで一番頑張ってきたからか、今にも泣きそうになっている。
「お兄ちゃん‥‥‥」
「大丈夫。なんとかするよ」
「そうだよ!ポチはいつも私達を助けてくれる!」
「そうよ!」
別に無料券とかいらない。とにかくみんなが楽しめるようにしなきゃな。
とりあえず犯人探しより、一時的にでもお客さんを呼ぶか‥‥‥と思いつつ、犯人を捕まえる作戦を考えた。
「職員室の天沢先生の机にコーヒーの粉が置いてある。熊はそれと紙コップを盗んできてくれ」
「盗む⁉︎」
「そのあとは、一旦メイド喫茶じゃなくてカフェとして客を呼んでくれ」
「先生にバレたらどうすんだよ!」
「天沢先生なら大丈夫だ。少し怪我するぐらいで済む」
「断る‼︎」
すると夢野と白波瀬と愛莉と秋月の四人は猪熊に近づいて目を見開いた。
「やれ」
「は、はい」
「よし、俺はお客さんの情と好奇心に訴えかける。白波瀬、三年生のメイド喫茶に侵入しろ」
「はい♡ご主人様♡」
「お、おう。俺が放送室に行って、あることを言うから、その時に様子が変な生徒がいないか監視してほしい」
「かしこまりました♡」
白波瀬〜、夢野が怒るから、そのテンションやめてくれ〜!
「ポチ」
「んじゃ、メイド喫茶に入ったら俺の携帯にワン切りしてくれ。作戦開始‼︎」
夢野に怒られる前に放送室に走り、白波瀬から不在着信がきているのを確認してマイクのスイッチを入れた。
「皆さん聞いてください!調理室でメイド喫茶を予定していた者です!今朝学校に来ると、メイド服が何者かに切り裂かれていました。最低な行為です!そこで、今は普通にカフェとして店をやっていますが、犯人を捕まえた人には全メニュー無料で提供します!調理室でコーヒーでも飲みながら一緒にこの事件を推理しましょうー⁉︎」
背後から誰かに制服を引っ張られ、マイクのスイッチを切られた。
「天沢先生⁉︎」
「バカ‼︎このやり方じゃ校内が混乱する!」
「いやいや!」
「我々が許可します」
「副会長!琴葉!」
放送室を聞いた琴葉と副会長がやってきて、俺の作戦を許可してくれた。
「問題が起きても、生徒会が責任を取るってことでいいんだな」
「はい」
「いや、問題にはしません」
「どういうことだ流川」
俺にはそれなりの作戦があった。
「これ自体、学園祭のイベントにしちゃえばいいんです。偽の犯人を捕まえさせて、捕まったらイベントでしたって言えばいいんです。きっと盛り上がります」
「偽の犯人は誰がやるんだ」
「天沢先生お願いします‼︎」
「は⁉︎ふざけんな!」
「天沢先生って、そろそろ誕生日でしたよね」
「それがなんだ」
「協力してくれたら、いいことあるかもですよ?」
「よし!やろう!」
バカで助かった。
「副会長、天沢先生の特徴を書いた紙を今すぐ作って、大量にプリントアウトして」
「了解だ」
副会長は琴葉に頼まれ、軽くメガネをクイっと上に上げて出て行った。
「それとるっくん」
「なんだ?」
「本当の犯人はどうするの?」
「捕まえて謝らせる」
「犯人の手がかりは?」
「三年生のメイド喫茶をやってるクラスに居る確率が70パーセント。でも、99パーセントになるかもしれない」
「と言うと?」
「そのクラスに、生徒会のメンバーはいないか?」
「あー、冬華ちゃんね!」
「天沢先生⁉︎」
「違うわ!」
「西村冬華ちゃんだよ」
「冬華っていうのか!」
「うん!」
「遂に下の名前で呼んでくれたね♡流川きゅん♡」
「はいはい、きゅんきゅん」
「それで、冬華ちゃんがどうかしたの?」
「多分、俺達のメイド喫茶を潰そうとした動機は食堂の無料券だ」
「だからってなんで冬華ちゃん?」
「メイド服が切り裂かれたのは、琴葉があの発表をする前だ。動機がそれなら、前からそのイベントがあることを知ってた中にいる!真実はいつも」
「んで、わたしはどうしらいいんだ?」
「最後まで言わせて⁉︎」
「天沢先生は適当に校内を歩き回っててください」
「了解!」
「俺はとりあえず調理室に戻るから、あとは俺に任せてくれ」
「分かった!」
放送の効果があったのか確かめるために調理室に戻ると、いかにも探偵に憧れていそうな真面目な男性達があつまり、そこそこ繁盛していた。
「白波瀬、ちょっと」
白波瀬を調理室の外に呼び出し、怪しい人がいなかったか聞くことにした。
「怪しい奴はいたか?」
「これといって居なかったわね」
「そうか。俺の中で犯人の目星は付いてるから、俺が捕まえるまで探偵ごっこしててくれ」
「目撃情報の紙が張り出されてたけれど、あれは本当?」
「あれは嘘だ。とにかく、夢野にはこまめに休憩させてくれ」
「分かってるわ」
「犯人を捕まえたら、ついでにメイド服も借りれるかもしれなし、とにかく今、本当の犯人は相当焦ってるはずだ。このまま、この偽の犯人探しを盛り上げまくってくれ」
「了解よ。早く解決して、メイド服を着れたらご主人様にいじめてもらいです♡」
「夢野に殺されるからダメだ!」
「入れなきゃ浮気じゃありません♡縛って叩いて舐めるぐらいなら♡」
「浮気だから!舐めたらアウトだから!」
「アウトだから」
「夢野⁉︎」
夢野は調理室から顔だけを出し、ギロッと白波瀬を睨んでいる。
「なんで凛ちゃんとこそこそしてるの!」
「大事な話してたんだよ」
「浮気じゃん!」
「浮気の基準どうなってんの⁉︎」
「ふん!」
「問題解決しようとしてんの!」
「期待してる」
そんな不機嫌そいに言われましても‥‥‥とにかく今は犯人探しだ!間違ってればごめんなさいの一言でいい。正面から行ってやる‼︎
解決したら夢野とイチャイチャしよ!
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